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萌え茶道部の文貴くん。第六章・第十一話

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千乃 美夜美(みやび)

 渡辺は、木漏れ日の中で目を覚ました。

「……アレ……ここは?」
 まだ目もよく見えず、視界もボンヤリしている。

「ど……どうしてボクは……? ボクは……生きているのか……それとも……」
 交通事故に遭って、倒れて来た電柱の下敷きとなった記憶が蘇る。
体はまだ自由に動かないが、顔は何とか動かせた。

「アレ……なんか、枕が妙に……柔らかくて温かいな? それに何だか……優しい匂いがする……」
 渡辺は後頭部に感じる、柔らかな感覚に気を留めた。

「……ふふ。フーミンは、相変わらず甘えん坊さんだね?」
 聞き覚えのある声に渡辺は、霞む目を大きく見開く。

「……美夜美……先……パイ?」
 段々と、ぼやけた視界がはっきりして来ると、なつかしい少女の姿が浮かんだ。

「ごめんなさい。あなたを、こんな危険な目に遭わせてしまって……」
 けれども少女は、浮かない顔をしている。

「……先パイ……なんですか!? ホントに……千乃 美夜美……先パイ?」
 少女は膝に乗せている渡辺の鼻筋を、人差し指で悪戯っぽく撫でる。

「そうよ……久しぶりだね。一年ぶり、くらいかしら?」 
 憧れの先パイは、懐かしい笑顔で笑った。

「……ボクは、死んだんですか? ここは……天国?」
「どう見えるかしら、フーミン?」
「そうだな、少なくとも地獄には……見えない」

「アハハハ……♪ 大丈夫だよ~フーミンは生きてる!」
 千乃 美夜美は、ホワホワした笑顔で笑った。
「だってわたしが、助けたんだモン♪」

「先輩が……オレを? ……先輩は一体……?」
 渡辺は、絹絵や千乃 玉忌の異変から、何となく気付いていた。
(先輩に化けた『千乃 玉忌』……苗字の一致……もしかして先輩は……?)

「仕方ない……正体をバラしますか?」
 千乃 美夜美は、遠くの空を見上げる。

「そのままでいいからフーミン、『わたしのお尻の辺り』を触ってみて?」
 憧れの先パイは、いきなりとんでも無いコトを言い出した。
「……へ? お尻……? エエエエェェェェェーーーーーーーッ!!?」

「だから……お尻じゃなくて、お尻の辺り! もう、エッチッ!」
 先パイは、顔を真っ赤にした。

「……で、では、遠慮無く……」
 渡辺は膝枕をされたまま、千乃 美夜美の『お尻の辺り』に手を伸ばす。

「え? モフモフしてる? こ、これって……やっぱりシッポ!?」
 渡辺の手は、先輩のお尻に行き着く前に、モフモフしたシッポに触れていた。

「実はわたしは、キツネッ娘でしたコン♪ ……なんちゃって」
 少女は、はにかんだ笑顔で答える。

「なんですか、それ……カワイイから許されるレベルですよ、先パイ」
 渡辺は、上半身を起こした。
そんな彼の、メガネの向こう側から、熱い涙がこぼれ落ちる。

「やっと……やっと遭えた……美夜美……先パイ!?」
 渡辺は、千乃 美夜美の前で泣いた。

「フーミン、まだ茶道部を続けてくれていたんだね?」
「だって、あんなままじゃ、終われないでしょう? それに今は、大変なコトになってるんです」
 渡辺は、今までの経緯を千乃 美夜美に説明しようとする。

「大丈夫よ。フーミンがやろうとしてるコトは、わかってる」
千乃 美夜美は立ち上がった。
「わたしも、お母さまとの決着を、付けなきゃならない時みたい」

「それってやっぱり……『千乃 玉忌』のコトですか?」
 渡辺 文貴は、頭に尖った耳を生やし、お尻にフワフワのシッポを生やした先パイの背中に向かって聞く。

「ええ……そうよ」
 千乃 美夜美は、僅かに頷いた。

 

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