ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

一千年間引き篭もり男・第03章・18話

f:id:eitihinomoto:20190804105805p:plain

MVSクロノ・カイロス

「どんなに人類があがいても、太陽系ですら人類の生息域を超えて、遥かに広いのか?」

『現在、人類は太陽の周りを周る地球の周回軌道上に、コロニー群を建設し始めています。また、アステロイド・ベルト(メイン・ベルト)にも、資源採掘から財を成した企業群が複数存在します』

「企業群……か。まだ、国家にまでは成長してないんだな?」
『恐らくそれは、二十一世紀の価値観なのでしょう。今の時代では、国家という単位はほぼ消滅してしまい、巨大な企業たちが太陽系を支配しているのです』

「そうなのか!? それじゃあ、日本やアメリカ、中国もロシアも、滅びた理由は!?」
『はい。巨大企業によって、徐々に消滅していったのです』
「だけど企業ってのは、国家の中で存在し得るモノじゃないのか!?」

『いいえ。二十一世紀でも国家を上回る影響力を持った企業は、存在したと思いますが?』
「た、確かにそうだケド……いくら巨大企業でも、どうやって企業が国家を支配したんだ!? 企業は、その国の法律の制約を受けるだろうに!?」

『国家の威光が、著しく損なわれる事象が頻発したと言えば、お解りになりますか?』
「戦争に敗れた……って、コトか?」『残念ですが、違います』
 ボクは一日が僅か十時間のガス惑星を、あおぎ観ながら考える。

「それじゃあ、大不況とか? 通貨や株価、土地……あやゆる価値が下がるからな」 
『正解です。世界規模の超大型通貨危機に、巨大国家の指導者の交代……国家のあらゆる弱みに付け込んで、巨大企業たちは自らの生み出した電子マネーを流通させました』

「巨大国家の指導者が交代するタイミング……つまり、野党側にロビー活動を行って、自分たちの通貨を承認させたのか?」
『はい。野党は巨大企業群から、資金を得ていましたからね。それに……』

「通貨危機で貨幣の価値が暴落しているところに、自分たちの電子マネーを流通させたんだな?」
 ボクたちは、宇宙船の先端に向かっていた。
六十人の娘たちも、ゾロゾロと周りを歩いている。

『超大規模の通貨危機は、巨大国家のマネーゲームが引き起こしたモノでした。当時の人々は、国や為政者、巨大金融企業に疑問を抱いていたのです』

「でも……自分の国の貨幣価値が失われた国家に、どれ程の価値があるんだ? 貨幣の価値を国家が保証しているからこそ、国は成り立つんだろう?」
『実際、その通りになりました。それ以降、国家は急速に衰退していくのです』

「やがて国家の影響力は薄れ、世界を巨大企業が支配するようになった……ってところか?」
『はい。とくに人類が、宇宙に拠点を築きはじめてからは、国家という単位は急激に意味を無くすのです。今は殆どの地域を、企業が支配していますから』

 ボクは、資本主義の行き着く未来を見た気がした。

「ねえ、パパ」「この先が、展望室だよ」
 娘たちが、展望室への扉に向かってボクの背中を押す。

「これが……木星圏の姿か? 思ったより、何も無いな」
 展望室の巨大なスクリーンに映っていたのは、未来に来てからは見慣れていた、ただの星空だった。

『この宇宙の中を、何万隻の水素、ヘリウム、メタンの巨大輸送船が、行き来しているのです』
 ベルが言った。
よく見ると、地球で見るより遥かに小さな太陽が輝いている。

「人類の進歩ってのは……それでも偉大なモノなのか?」
 ボクはポツリと呟く。

 その後、ボクたちはエレベーターを昇り、宇宙船の上側からブリッジへと戻った。
途中の眼下には、巨大な二十一世紀の街が眠りに就いていた。

『艦長……この艦の名前は、お決まりになりましたか?』
 ベルが言った。

「ああ……『MVSクロノ・カイロス』だ」
 それは古代ギリシャに置いて、『時』や『刻』を表す言葉だった。