ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第03章・16話

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質問

 ボクはこの艦の中の、最高権力者になったようだ。

「ところでノルニール、この艦の名前は決まっているのか?」
 艦長の椅子のあるロフトの一階上に置かれた、カプセルに向かって聞いてみた。

『時の魔女様によって、名前は与えられておりますが、艦長にお決めいただく事になっております。わたしも、この姿のままでは不便なようです。姿を現すといたしましょう』
 すると、カプセルの覗き穴から光が吹き出し、空間に像を浮かび上がらせる。

『この姿は、ベルとでもお呼びください』
 そう言って優しく微笑んだのは、ベージュ色の長い髪の女性の姿だった。

「ベル……ノルンの一人、ベルダンディのコトか?」「はい、お気付きでしたか」
 ボクは、上から降りて来る彼女の手を取ろうとするが、彼女は身体ごとボクをすり抜けた。
「キミは……フォログラムなのか?」

『今、艦長が見ておられるのはそうです。わたしの本体は、まだカプセルの中ですから』
 フォログラムの、ベルが答える。

「それじゃあキミは、まだカプセルの中に……」
 ボクは、再びカプセルの覗き穴を覗きこむと、中にはベルダンディが眠っていた。
「く、黒乃は!? 彼女は、どこに!?」

『それはもう艦長がわたしを、時澤 黒乃と認識しなくなったから、そう見えるのでしょう』
「そうか……キミは、人が見たいように見える存在だったね。ボクがキミを、黒乃とは別人と思ってしまったために、キミは黒乃ではなくなったんだ」

『艦長……わたし共も、艦長に質問をさせてもらって良いでしょうか? 質問内容は、艦長があらゆる物や事象について、どう考えているか……です』
 ベルはボクの前に立って、優しい瞳で言った。

「艦長になるにあたっての、資質調査ってヤツか? ああ、構わないよ」
 ボクは、面接でも受けるつもりで了承する。

『どんな結果であろうと、宇宙斗様は既にこの艦の艦長です』
 ベルはそう前置きをすると、ボクに向かって質問を投げかけた。
『まず、最初の質問です。宇宙斗艦長は、宇宙をどう認識されておりますか?』

「宇宙!? いきなり、壮大な話だな」
 面接では、よほど先鋭的な会社でも無い限り、質問されそうもない問いかけだった。
「そうだなあ。ボクも、自分の名前になってるだけあって、宇宙には興味があったんだ」

 宇宙船の艦橋から見える、広大な星空を見つめながら答える。
「ボクの生きた二十一世紀じゃ、まだ色んなコトが未知だった。それでも星座や天体に対する興味は尽きなかったよ」

『では次の質問……時間については、どうお考えですか?』
「また、哲学的な質問だなあ? 時間……時間ねえ。時間かあ?」
 そんなに優秀でも無い頭を捻って、色々と考える。

「時間ってのは、物質が変化する様を、人類が時間と呼んでいるだけじゃないかな?」
『では、光については、どうお考えなのでしょう?』
「ひ、光!? え~っと、この宇宙空間で、一番早く動くモノ?」

『宇宙の膨張スピードは、光速を遥かに超えてます。これに付いては、どうお考えでしょうか?』
「相対性理論は、空間には適用されない。最高速度が光速なのは、あくまで空間の中を移動する物質やエネルギーの話だろ?」


『では、光と時間の因果関係については?』
「相対性理論のアレか。物質は、光速に近づくほど、時間の進みが遅くなるってヤツ」
『もう一度、宇宙に関する質問です。宇宙が創られる以前に、時間は存在しましたか?』

「とうぜん、時間は存在した」『どうしてそう考えるのです?』
「ボクの時代では、宇宙が誕生したのは138億年前とされている。だったら、どうして138億年前のその時だったんだ? それ以前でも、以後でもなく……」

 ボクは、ベルから質問されなくても、答えを続けていた。
「宇宙は、揺らぎから生まれたとされるケド……揺らぎがあって、ある時ビックバンが発生したというのは、時間の流れに他ならない」

 艦長の椅子に座って、続きを語る。
「それに宇宙ってのは、どうやって生まれたかを考える前に、どこに広がったのかを考えなくてはならない。本当に何もない無だったのか、無限の空間が既にあったのか……」

 するとベルが、ボクの前に来て言った。
『あのお方が、宇宙斗様を未来にお連れになったのも、解かる気がします』

 最後のその言葉だけ、機械的には感じなかった。