ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第03章・13話

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もう一つの冷凍カプセル

「こ……これが木星!? 本物か? だとしたら、さすがにデカいな」

 見慣れた住宅街の空に浮かぶ、太陽系・第五惑星。
「あれが本物なら、この宇宙船は火星から木星まで移動したコトになる……」
木星の雄姿に気を取られて、ボクは黒乃のコトを一瞬忘れる。

「そうだ、黒乃!!? 黒乃は……」
 けれども、黒乃が立っていた場所には、誰の姿もなかった。
「まるで、逃げ水のようだな……キミは」

 逃げ水とは、夏の暑い日にアスファルトの上に現れる、心綺楼の一種である。
「キミは、フォボスの地下で、眠っているんじゃないのか?」
 木星を見上げながら、ポツリとつぶやく。

 すると、うしろの方から、かしましくにぎやかな声が聞こえてきた。
「あ、パパ、いたいた」「娘を置いて、先に帰っちゃわないでよね?」
 無人の住宅街の道路は、一気ににぎやかになる。

「お前たち……セノンたちは一緒じゃないのか?」
「パパが覗きなんかするからでしょ!」「文句言いながら、帰ってったよ!」
「まったく、堂々と女湯なんか入って!?」「信じらんない!」

「お前たちが入れって言ったんだろうが!?」
「だって、サービス回は必要でしょ?」「なんの話をしとるんだ!!」
 会話をしてる間にも、六十人もの娘たちは、ボクの周りにまとわり付いてきた。

「えへへ、パパぁ!」「自宅はすぐなんだから、ぶら下がるな」
 ……と、言いつつも、湯上りの少女のポカポカした肌に、安らぎを感じる。

「えっとねえ。来て欲しいとこがあるんだ!」「こっちこっちィ!」
 娘たちは急にボクの両手を取り、背中を押した。
「おわッ!? お前たち、どこへ行くんだよ!!」

 彼女たちは自宅の前を駆け抜け、さらに何百メートルか走る。
「おい、お前ら一体どこまで……えッ!!?」
それは大した距離では無く、直ぐに終わりを告げていた。

 見慣れた住宅街は、巨大な金属の壁によって、強引に断ち切られている。
道路の突き当りには、小さな扉があった。
「……ボクたちが、宇宙船に入ってきたときと、同じような扉だ」

「さ、パパ。入って、入って」「パパを、待ってる人がいるんだよ!」
「ボクを、待ってる……!?」恐る恐る扉を開け、中へと入る。

「こ、これは……まさに、アニメや漫画で見た、宇宙船の内部だな?」
 扉の向こうは通路になっていて、機械的なフレームが続き、近未来的なデザインの間接照明が通路の壁をアップライトで照らしだしていた。

「こんな通路にも、重力は存在するのか?」「そだよォ」「でも、歩くのメンドー」
「パパ、おんぶしてェ!」「抱っこ、抱っこォ!?」「おわあッ!!」
 ボクは、娘たちのダンベルで、筋トレしながら前へと進んだ。

「あ、もうすぐだよ、パパ!」「頑張って!」「なぜ、頑張らねばならんのだ!?」
 そう言いつつもボクは、娘たちの指し示す扉の前へと立った。
「エレベーターか? こんな宇宙船の中で、どこに登ろうってんだ?」

 エレベーターの中は、十歳くらいの娘が六十人乗っても間が空くくらい、広々とした大きさだった。
「作業用のエレベーターなのか……でも、宇宙船の中で登る場所と言ったら……」
エレベーター特有の、重力に逆らう感覚に襲われたあと、目の前の扉が開く。

 エレベーターを降りると、ロフトのようなスペースに出た。
金属製のロフトには、背の高い金属製の椅子があって、そこから小さな階段で少し下がった場所にある、三つの椅子も金属で造られている。

 ロフトの下にもやはり、たくさんの金属製の椅子があって、その前にはパネルやレバー、キーボードなどが光輝き、その向こうの窓には宇宙空間が広がっていた。

「ここは……やはり、宇宙船の艦橋か……」
 何となく、予想はできていた。
「宇宙船内で、登る場所といえば、艦橋くらいだからな。もっとも……」

 地球の海を行く船のような艦橋がある宇宙船は、日本のアニメくらいしか見かけない……と、言おうとしたが、止めておいた。

『ようこそ、お越しくださいました、艦長』
 宇宙船の艦橋に、穏やかな女性の声が響き渡る。
「この声……船の、オペレーティング・システムか何かか?」

 ボクは、相変わらず周りに纏わりつく、娘たちに尋ねた。
「ん~ん、違うよ」「こっちこっち」「後ろだよ」
娘たちはボクを、エレベーターの後ろの左右にある階段から登った先に、案内する。

「なッ!!? ……こ、これは……『冷凍カプセル』!!?」
 ボクは驚きの余り、それからしばらく言葉を失った。