ラノベブログDA王

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萌え茶道部の文貴くん。第六章・第六話

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激闘の始まり

 四つの部活の紹介が終ったところで、トイレ休憩が入った。

 壇上で事の成り行きを見守っていた学園長が、娘に声をかける。
「沙耶歌、今日の舞台、とってもいい感じね。まさか貴女が、ここまでやるなんて」
「何を言っているの、お母様。舞台を成功に導いてるのは、蒔雄とみんなと……あの……」

 少女の目線の先には、渡辺の姿があった。
「この企画・演出の殆どはアイツのアイデアなんですぜ!」
橋元は自分のことの様に、誇らしげに胸を張る。

「渡辺くん、素晴らしい才能ね……それに貴女のフィアンセのMCも、ステキだったわ、沙耶歌」
「……おっ、お母様ったら!? か、からかわないで下さい!!」
 醍醐寺 沙耶歌は、母の言葉に顔を赤らめた。

 学園長は娘の顔を見て、大勢の観客の笑顔を見て、『生徒を守る側に立つ決心』をする。

 一人だけ浮かない顔で、かかった蛍光塗料を拭うのは、醍醐寺 草庵だった。
「……この屈辱……ガキどもが付け上がりおって!?」

 彼は、巨大企業グループ・醍醐寺を生み出した、偉大なる父親の跡を受けて会社を引き継ぐ。
だが、重役たちがこぞって彼を軽く扱い、彼の意見に全く耳を貸さなかった昔の記憶を、思い出す。

「どいつもこいつも、オレを無能呼ばわりしやがって! オレが継いだ後は、親父が切り捨てられなかった利益の上がらない子会社を整理し、海外にまで進出しようとしているのだぞ!?」

 愚痴を垂れる草庵の傍らに、女の姿は無かった。

 舞台の下からそれを見ていた田代 絹絵は、女の行方が気になる。
「……あの女、どこへ行ったッスか? それに……ご主人サマまでいない!?」
 体育館から、いつの間にか渡辺の姿までもが消えていた。

「フウ、ホノ、申しワケ無いんスけど、ご主人サマの姿が見当たらないんすよね? 探してくるんで、少しの間お願い出来るッスか?」
「ホントだ。部長がいない」「了解した。捜索は任せる」

 絹絵は双子に後を任せると、体育館を出て渡辺を探す。

「待って……!!」
 渡辺は、誰かを必死に追いかけている。
彼は体育館の外で、見覚えのある少女の後ろ姿を追っていた。

「待ってくれ……先パイ!」
 けれども少女は、渡辺の言葉など耳に届いていないかの如く、走り去ろうとする。

「待ってくれ! 千乃先輩!」  
 しかし渡辺は、それが本当に自分が叫んだ名前の少女なのか、不安で仕方がなかった。
「ホ、ホントに……千乃先パイなのか!?」

 校舎と体育館を繋ぐ渡り廊下の下で、少女は振り返った。

「……先輩……やっぱ千乃先パイだ!?」
 少年の眼鏡の向こうから、涙がこぼれる。
振り返ったのは、紛れも無く『千乃 美夜美』の姿だった。

「……あなた……誰?」
 少年にとって衝撃的な言葉を、少女は呟く。
「な、なに言ってるんですか!? ……オ、オレですよ、渡辺です!」

「さあ? ……聞いたこと無いわ」
 少女は妖しい瞳で微笑んだ。

「忘れちゃったんですか……生意気で可愛げの無い後輩だって言われて……オレ……」
「……何を泣いているの? あなたは本当に、わたしを知っているのかしら?」
「え……!?」急に生暖かい風が吹き、木の葉が舞い散る。

 少女は、細く吊り上がった目つきでになって、一瞬で渡辺に近づくとその肩に手を廻した。
「なッ!? 貴女は……!!?」「クククククク……!!」

 彼の知っている『千乃 美夜美』とは、余りにもかけ離れた動きに恐怖を感じる渡辺。
「先……パイ?」渡辺の咽喉に、背後から鋭利な長い爪が伸びる。
(……愚かな人間の小僧が。妾の計画の邪魔となる者には、永遠の眠りを授けてやろうぞ!!)

「ご主人サマ! そいつから離れてッス!!」 
 いきなり現れた絹絵が、大きな小槌で千乃 美夜美に跳びかかった。
寸でのところで絹絵の攻撃をかわした千乃 美夜美は、ヒラリと宙を舞う。

「絹絵ちゃん? ど、どうして!?」渡辺は、何が起きているのか、ワケがわからなかった。
「よく見るッス。こいつは、千乃先パイなんかじゃ無いッス!!」
「な、何を言って……!?」渡辺は目を再び、先パイへと向ける。

 二階の高さの渡り廊下に着地した女は、経営コンサルタントの女性秘書『千乃 玉忌』の姿となっていた。