ウィッチレイダー
「ハヨー、ハルモニアのコたち。可愛らしいコばかりじゃない」
舞い降りた機体のうち、ピンク色の一体が喋りす。
元が小型の戦闘機であったため、アーキテクターに変形したところで小さかった。
「当たり前だろうが。どいつも、こいつも、精子や卵子を選り好んで製造されてんだ。ブスなんて好き好んで作るヤツは、いねーだろうよ?」
挑発的な態度で応じる、プリズナー。
「可愛くないのも、混じってるわね。どうする、みんな?」
ピンク色の少女の形をしたアーキテクターは、大量にいる姉妹機たちに話しかける。
「そりゃ、邪魔なのは排除っしょ?」「ちゃっちゃと殺っちゃいましょうよ」
「ま、待ってくれ……」ボクは、思わず叫んでいた。
「キ、キミたちは一体、何者なんだ? やはりクーリアを、さらいに来たのか?」
少女のような顔をした機構人形たちであったが、表情から何を考えてるかまでは読めない。
「ヤレヤレ、こっちの『保護対象』が狙いってんなら、大人しく応じるワケにも行かんぜ?」
プリズナーは、背後にクーリアを隠しながら、交渉を勧める。
「わたしたちは、『ウィッチ・レイダー』よ」アニメの声優のように、可愛らしい声だった。
「『魔女(ウィッチ)の急襲者(レイダー)』だと、さしずめ『時の魔女』の、尖兵ってところか?」
ウィッチの名の通り、彼女たちの頭部は、魔女の三角ぼうし的なデザインになっている。
「クーリアって、カルデシア財団の、クーヴァルヴァリア・カルデシア・デルカーダじゃない?」
「まあリストにはあったから、もしかしてとは思ったケド、まさかホントにいるとはね」
「ずいぶんとドジなご令嬢だね。でも、今の目的は違うのよ」
「まどろっこしいいな。だったらテメーらの目的は、なんだ?」
苛立ったフリをしながらも、背後のトゥランにコンタクトを取るプリズナー。
「敵は全部で、六十機。ピンク、オレンジ、マスカット色、水色、茶色の機体が各十二機います」
ボクは、トゥランが言った色に、何か懐かしいモノを感じた
「ねえ見て、おじいちゃん。上からまた、何か降りて来るよ?」セノンが上空を指さす。
「アレは……軍事用のアーキテクターだ。ハルモニアを拠点とする、マーズ宙域機構軍の紋章だ」
真央は、武骨な重装備のアーキテクターの、左肩のシールドに描かれた狼の紋章を見つめる。
「これで形成逆転だね、おじいちゃん」「あ……ああ」けれども、不安は拭いされない。
「仕方ないなあ、メンドウだけと戦ってくる」
六十機のウィッチレイダーのうち、最初に語りかけてきたピンク色の機体だけが、飛び上がった。
「軍用のコンバット・バトルテクターは、十二機。それを、一機で迎え撃つというのですか?」
「ヤツらも、クーリアを助けに来たんだ。こっちに向かって、火器は使えねえ」
プリズナーは、クーリアたちを人間の盾として戦う戦法を想定する。
けれどもウィッチレイダーの一機は、降下中の十二機のアーキテクターを抜き去り、さらに上空へと舞い上がった。
「それじゃ、いっくよー!」彼女から降り注ぐ、レーザー光。
十二機のコンバット・バトルテクターは、一瞬にして爆散した。
「そ、そんな……十二機の軍用機が……!?」驚愕する真央。
「可愛い女のコなのに、とんでもなく強いですよ、おじいちゃん!?」
「ああ……それが、六十機も……」その場にいた全員が、理解する。
抵抗など、無意味であるコトを。
「一つだけ、解ったコトがあります。このコたちは、わたしの妹などではありません」
ゆっくりと降り注ぐ、軍用アーキテクターの残骸を見つめ、トゥランは呟く。
「さてと、任務かんりょおォ!」
十二機の軍用アーキテクターを破壊したウィッチレイダーが、少女の姿となって戻って来た。
「答えるのが遅くなったケド、わたしたちの目的を伝えるわ」
彼女の指が、ボクに向いた。
「群雲 宇宙斗さま。わたしたちの目的は、あなたです」
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