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一千年間引き篭もり男・第02章・14話

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アーキテクター

「彼女は、戦闘用の『機構人形(アーキテクター)』だ」

 プリズナーは、誇らしげに言った。
「骨董品(アンティーク)な、『重機型機構人形(へビー・ギアテクター)』などに遅れを取るモノでも無い」

 クーリアが単に『重機ロボット』と呼んだロボットにも、種類によって専用の呼び名があるようだ。
「トゥランが倒した重機ロボットが、ヘビー・ギアテクターっていうのか?」「そうだ」
プリズナーは、戦闘を終えたトゥランやラサたちを、両手を広げて出迎える。

「アーキテクターとは、正確には『アーキテクト・プロテクター』。種類によって、さらに名称別けされている」
 機構人形と、まるで恋人でも抱きかかえるように、熱い抱擁を交わすプリズナー。

「わたしのような戦闘用は、『コンバット・バトルテクター』とよばれてますね」
「トゥランは、その名称がお気に召さないようでな」
「優雅さというモノが、たりませんね。できれば『ヴァルキテクター』と、お呼びください」

「ヴァルキテクターか? 悪くない響きだ」プリズナーも納得する。
 確かに彼女の提案した名前の方が、彼女にはしっくり来る気がした。

「それより、プリズナーさま」「アイツらが暴れたせいで、崩落が起こってます」
「爆発もまだ、あちこちで起こってるし」「さっさと逃げちゃったほうがいいよ。こんなトコ」
 トゥランの髪から分離した四体のラサたちが、かしましく騒ぐ。

「そうだな、目的との接触は完了した」
「後は彼女を、上の街まで送り届けるだけですね」
「おい、お前は契約外だが、ついでに助けてやるから付いて来い!」

 千歳も若そうな男は、命令口調で言った。
「ま、待ってくれ。プラントにはまだ、ハルモニア女学院の生徒が取り残されているんだ。彼女たちを置いていくワケには……」

「そうか?」プリズナーは、とても淡泊だった。
「大勢の人の命がかかってるんだ。契約はあるだろうが、何とかならないのか?」
「人の命が、替えが利かないと思うのは、検討違いだぜ」

「……え?」彼の言っている意味が解らない。
「だったらお前は残れ。その娘さえ無事に届ければ、オレの任務は完了だ」
 武力で完全に上回る相手に対し、交渉の余地は無いかに思えた。

「ま……待ってください。アナタは、お爺さまから依頼を受けたのでしょう?」
 ボクの腕に抱えたいたクーリアは、意識を取り戻していた。
「そうだ……」「プリズナー!?」「別に秘密にしろとも、言われておらん」

「報酬は何ですか? 地位……それとも、土地や宇宙船ですか?」
 現金の存在が失われた未来にあって、報酬からも『金』は除外されている。
「それらが全て、一気に手に入るモノさ」プリズナーは、不気味な笑みを浮かべた。

「そう……オレが要求したのは、『アナタ自身』だよ」
 クーヴァルヴァリアは、言葉を失う。
ボクですら、驚きの報酬内容に唖然とする他なかった。

「カルデシア財団の総帥とはいえ、娘夫婦に先立たれた爺さんだ。孫のお前まで失うワケにも、行かなかったんだろうよ」
 プリズナーの口から、衝撃の事実がさりげなく明かされる。

「ですがアナタは、わたくしの同意が無ければ、わたくしを手には入れられないハズでしょう?」
 気丈さを見せるクーリアに、プリズナーは近寄ってきた。

「ククク……結婚ごときで、身構えるコトもあるまい?」
「おい、プリズナー。女性にとって結婚とは、一生の決断だろう……?」
 ボクはクーリアを、背中へと隠す。

「残念ながら、お前らの時代とは違うんだよ、原始人」
 プリズナーは、ボクをバカにした。
「この時代は、女だからと言って、子供を産み子孫を残す必要は無いのさ」

「それは、どういう意味だ?」流石に想像がつかない。
「宇宙斗さま……この時代には、人工子宮(ユーテラス・アーティファクト)があるのです。
「人工の……子宮だって!?」

「ああ……この時代において、人間は『量産が可能な製品』だからな」
 余りに衝撃的な言葉だった。

 

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