ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第02章・13話

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トゥランとラサ

「……キ、キミは誰?」
 ボクは、窮地を救ってくれた男に問いかけた。

「ん……なんの言語だ? 日本語か?」
 男の足元には、動けなくなった警備ロボットたちが、ほぼ無傷で転がっている。

「オレの名は、『プリズナー・トリグラフ・ダージボグ』だ」
 そう名乗った男は、漆黒の宇宙服を身にまとい、ヘルメットの中の顔は、クールで若かった。
けれどもヘルメットは異形で、左右の後ろに目のようなセンサーがあり、顔が三つあるように見える。

「そっちこそ、何者だ? ハルモニア女学院の、生徒なワケもあるまいに?」
 男の眼と、四つのセンサーは、ボクと、ボクの腕の中で気を失っているクーリアを観察する。

「ボクは、宇宙斗。このコは……」
「クーヴァルヴァリア・カルデシア・デルカーダさま。オレの『救助対象者』だ」
 どうやら男は、カルデシア財閥から依頼を受け、ご令嬢を救いにい来たようだ。

 すると、プリズナーの背後に、機械の影が現れる。
「あ! うしろにまだ……!?」「フッ、心配するなよ、宇宙斗」
プリズナーは、背後の影の正体を知っている様子だった。

「わたしは、『トゥラン』。プリズナーの相棒です……古の人間よ」
 プリズナーの背後から、影が姿を現わす。
トゥランと名乗った影は、女性型のアンドロイドに見えた。

 トゥランは、美しい白い顔をしており、まぶたもちゃんと開閉する。
全身は、紫色とワインレッドの装甲に覆われ、背中には白い翼型のスラスターが生えていた。
頭からは、髪の毛を模したパーツが四つ伸びており、黒乃のクワトロテールを連想させる。

「古の人間……やはりコイツは、コールドスリーパーか?」
「そうです、プリズナー。彼のコールドスリープの開始は、二十一世紀と予測されます」
 目が合ったときに、網膜から情報でも読み取ったのか、トゥランは正確に言い当てた。

「それは無いだろ、トゥラン。二十一世紀に、冷凍睡眠技術など確立されていない」
「いや、彼女の言う通りボクは、二十一世紀に生まれ、十七歳でコールドスリープに入ったんだ」

「バ、バカな!? コールドスリープの技術が確立されたのは、最速でも二十五世紀からなのだぞ?」
「ああ……だから、ボクと同じ日に、コールドスリープに入った女の子は、未来に来れなかった」
 プリズナーは、ボクの言葉を理解したのか、押し黙った。

 すると、金属の床や壁を破壊する、重機ロボットの音が迫って来る。
「話はあとだ。オレはコイツと、上の街までの道を切り開く。お前はその娘を担いで、付いて来い!」
「わ、わかった」その場は、納得するしか選択肢が無かった。

 お姫様抱っこをしたクーリアの体は、フォボスの小さな重力下では綿アメのように軽い。
部屋を出ると、暴走した重機ロボットの群れが、間近まで迫っていた。
金属の壁や床が無残に破壊され、あちこちに火の手が上がっている。

 突然ボクに、大きな影が覆いかぶさった。
「うわああッ!?」
見上げると、重機ロボットの一体が巨大なハンマーを振り上げていた。

「何をやっている……。仕方ない、トゥラン!!」「了解しました。戦いましょう」
 トゥランは、白い翼を広げて、重機ロボットの開けた空間に舞い上がる。

「旧型の『同胞』たちよ……何者に操られているのでしょう。破壊は、いたしません。あなたたちの稼働軸を攻撃して、沈黙させます」
 『彼女』は、優雅に舞うように、頭の四つの髪を広げる。

「お行きなさい、『ラサ』たちよ!」
 トゥランが呟くと、『髪の毛』の先端部分が外れる。
外れた四つのパーツは、四体の少女型のロボットとなって、宙を舞う。

「任せて、トゥラン」「ちゃんと、重機ロボットの関節を攻撃するよ」
 ラサと呼ばれた少女型アンドロイドたちは、小さな翼を使って重機ロボットの攻撃をかいくぐりながら、両腕のビーム砲で関節部に攻撃をヒットさせていく。

「ス、スゴイ。まさにピンポイントに、ロボットの関節を狙撃して、動けなくしてる!?」
 重機ロボットたちは、一瞬で沈黙した。

 

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