ラノベブログDA王

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萌え茶道部の文貴くん。第四章・第五話

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夕日の勇者

「……お父様は、変ってしまわれた。この数年、まるで何かに憑り付かれたかの様に、仕事やお金に執着して……だからお母様は別居をされたのよ」
 醍醐寺 沙耶歌は、苦しい胸の内を吐露する。

「ま、大人ってヤツは、家族を食わせるために、どうしたって金を稼がにゃならんからなあ。ウチの親父の会社みたく、経営難で『醍醐寺』に借金までしてる中小零細からすっと羨ましい話だぜ」
 橋元は、夕日の染まる街並みを眺める。

「……そうでも無いのよ、蒔雄。お母様も、学校の経営が厳しいみたいで……」
 副会長も、沈む夕陽を物憂げに見つめていた。
「今度の旧部室棟の解体だって、空いた敷地を父の会社に売って……」

「お母上がこの『学園の理事長』さまで、お父上が『醍醐寺グループの筆頭会社の社長』であらせられますと、苦労が絶えませんなぁ……お嬢サマ♪」
 橋元は、おどけて言った。

「そう言う言い方は止めて!」許嫁のお嬢様は、不機嫌になる。
「……でも……でもね、蒔雄。最近のお父様は単に仕事に忙しいとかとは、ちょっと違う感じなの」
「違うって? 何がだよ、沙耶歌?」顔を上げたお嬢サマに問いかける。

「……上手く言えないけど、まるでホントに何かに憑り付かれてるみたいなの。学校の運営にも情熱を注いでいたのに、今は空いた土地に高層マンションを建てる計画で頭がいっぱいなのよ。数年前とは別人としか、思えないわ」

「何だよソレ。悪い幽霊にでも憑依されてるってのか?」
「そ、それは……」醍醐寺 沙耶歌は、顔を赤らめる。
 自分でも、子供が抱くファンタジーだと思えたからだ。

「ねえ……蒔雄。その『入部届け』なんだけど、受理してはくれないかしら?」
「へ? 今、何言ってんだ、 沙耶歌?」許嫁の提案に、橋元は驚かされる。 双子が書いた入部届けは、イタズラに使った後は、破り捨てようと思っていたからだ。

「あのコたち、ウチに来てからもずっと、周囲の大人たちから厄介者だと蔑まれて来たの。気の休まる場所なんて、あの家には無いのよ。わたしじゃ、どうにも……」
 副会長は自分の無力さに、悔しさを滲ませた。

「お願い。あのコ達は、あんな家にいるべきでは無いわ! 今の醍醐寺なんて、亡者の巣窟よ!」
 橋元は、何も答えなかった。
代わりに体育座りの少女を、両腕でヒョイっと掬い上げる。

「……なッ? 何をしてるの、蒔雄!」
 いきなりお姫様抱っこをされた少女は、橋元の腕の中で酷く暴れた。
「ちょっと、降ろして…! こんなところ、誰かに見られたら……」

「純白の可愛いパンツなら、さっきから見えっぱなしだぜ、お嬢さま?」
「えッ、嘘!?」醍醐寺 沙耶歌の顔が、子供っぽい表情に変わる。
「 さっき、廊下でぶつかったとき、見えたんだよ。お前、真面目過ぎなんだって」「も、もう」

「……ま、アレだ。お前もそう一人で抱え込むな」「……蒔雄……」
「何かあったら、素直にオレを頼れ、沙耶歌。そん時は、オレが守ってやるからよ」
 少女は観念したかのように目を閉じ、『頼りない騎士』に身を委ねる。

「アナタの……そう言う、いい加減でチャラチャラしたところが……嫌いよ」

「あのクソ生意気な双子のことなら、任せておけ。オレと渡辺で何とかするから……さ」
「……有難う……でも、またアナタに『悪役』を押し付けてしまうわね……」
 少女は抱き上げられながらも、頭をうな垂れた。

「気にすんな。カッコいい男は悪役だろうと、きっちり決めるぜ!!」
 この『滑稽で不恰好な勇者』を、夕陽が少しだけ勇ましく照らした。

 

次回・美味しい抹茶

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