ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第5章・8話

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富の魔王

「なんか、メチャクチャ派手な城だね?」
 城は、えげつないくらいに金ピカに輝き、細部にはあやゆる色の宝石が散りばめられている。
決して均整の取れた美しさではなく、むしろ醜悪ささえ感じるくらいに無意味に配されていた。

「ヤツの趣味でのォ。悪趣味にもホドがあるわ」
「なる程な?」「『富の魔王』か?」
 死霊の王だった双子は、城の主に見当が付いているようだった。

 剣士と少年、それに三人の少女が城の中を進んで行くと、肥え太ったオークやら、宝箱の怪物・ミミックやらが普通に襲い掛かって来た。

「オークごときの分際で、邪神に立てつくとはうっとおしい!」
『ネリーニャ・ネグロース・マドゥルーキス』が、剣を振りかざす。

「死霊剣『べレシュゼ・ポギガル』! 奴らが魂を喰らえ!」
 すると、巨大な髑髏がオークたちそれぞれの頭上に現れる。
魂を奪われたオークの群れは、一瞬にしてショック死を遂げた。

「ミミック風情は、我に任せろ!」
 『ルビーニャ・ネグロース・マドゥルーキス』も、それに続く。

「死霊剣『フェブリュゼ・ポギガル』よ! 死の棘を召還せよ!」
 すると暗黒のモヤの中から、無数の棘の付いた触手が現れ、ミミックたちを絡め取ると、どこに繋がっているとも知れぬ暗黒空間へと引きずり込んだ。

「ひえぇぇぇ~! 恐ろしい戦いかたをするな、お前たち……!?」
「何を言うか? この剣は元々、教会の倉庫にあったモノなのだぞ?」
「お前の、武器屋の売り物だったのだ。街の住人に売りつける気だったのだろう?」

 双子の辛らつなツッコミに、舞人は武器屋の店主の言葉を思い出す。
「あの武器屋の親父、いずれボクがパーティーを組むとき役立つ……とか言ってたケド、こ~ゆ~コトなのか!? 何か、根本的に違わないかぁ~!?」

 その様子を、白紫色の髪の剣士は何も言わず、ただ観察するように見ていた。

「……ここが、魔王の居る部屋みたいだね」「この様子を見るに、そのようじゃな」
 部屋の中は、在りとあらゆる財宝で満たされ、壁も天井も床も、今まで以上に過剰にきらびやかな装飾が施されている。

「なあ、ルーシェリア? 悪趣味なのはともかく、これだけの量の財宝なんだし、売ればメチャクチャな金額になるんじゃないかな?」
「ヤレヤレじゃな。『物欲』や『金銭欲』が、ヤツの力の源じゃ。呑まれるで無いわ、ご主人サマ!」

「ゴ……ゴメン」
 直近で、大金を失った少年は、バツの悪そうな顔をした。

「ヌフフ! わたしの城へようこそ……」
 どこからとも無く、甲高い声が聞こえ響き渡る。
すると一行の前に、二つの鳥に似た頭部を持った巨大な悪魔が現れた。

「招いてもいないのにノコノコ押しかけて来た挙げ句……我が部下を大量に屠るとは、相変わらず人間は、礼儀知らずですねえ。大方、城の『金銀財宝』が目当ての冒険者なんでしょうがねぇ~?」

「貴様が、この城の主か?」
 それまで、沈黙を貫いていた雪影が、白紫の垂らした長髪を靡かせて一歩前に出る。
「……残念だったな。わたしの目当ては財宝などでは無く、『キサマの首』だ!!」

 天酒童 雪影は、一歩一歩にじり寄るように魔王との間合いを詰める。
「このわたし……富の魔王『マモン・アマイモン・マンモーン』の首を獲ろうと言うのですかあ? 人間風情が、身の程を知りなさ~い!」

 剣士は白と黒の二振りの剣に手をかけ、双頭の鳥のような魔王は、四本ある腕に邪気を宿し暗黒魔法を放つ準備に入った。
 悪魔と剣士の間には、張り詰めた空気が流れる。

「……マモンよ。この妾が直々に会いに来てやったと言うに、随分な態度じゃのう?」
 皆が一斉に声のする方を見ると、漆黒の髪の少女が紅い目を魔王に向けて微笑った。
「さっさとひれ伏すが良い、『マモン・アマイモン・マンモーン』よ!」

「下がっておれ……幼き少女よ。そんなたわ言が通用するような相手では……」
 雪影がそう言いかけたとき、彼の背後で大きな物音がする。
「……あッ、あああ……アナタ様は!? ハハーーーーーーーーーーーーーーッ!!?」

 剣士が振り向くと、二羽の鳥の頭を持った魔王が、巨体を折り曲げて『土下座』していた。

「……なッ? バカな!?」
 白紫色の髪の剣士は、目を丸くする他なかった。

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