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萌え茶道部の文貴くん。第三章・第五話

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三献の茶

 渡辺は右手の中指で、メガネの中央部をクイっと上げると、みんなに語りかけた。

「『耐震補強もままならない、老朽化した部室棟を解体する』……。ここまでは、生徒の安全を考慮しなきゃならない立場の学校側にも、正当性がある」
茶道部に集った各部活の部長たちも、そこはうなずくしかなかった。

「でも、『そこに入っている部活まで、廃部にするコト』には、何の正当性も無いんだ!!」
 渡辺の発言の後、しばらく間があった。
パラパラと手を打ち鳴らす者が現れ、それはやがて拍手喝さいへと変わる。

「……そ、そうアル! 確かに廃部に正当性なんて、無いアル!」
「ヘンだと思ったガオ!! ダマされちゃうトコだったガオ!!」
「学校側も、汚いやり方するよね」同意する意見が、次々に上がった。

「つまり学校側は、二つの異なる問題を混ぜ合わせて、まるで一つの問題かのようにパッケージングして、我々に提示して来たと言うのですね?」
 メイド流剣道部の御子神 涼香が、渡辺の言いたかったコトを、論理的に言い換える。

「ボクたちの側も、そこに付け入る隙があると思うんだ」
 集まった九人の部長たちも、会議が始まった時に比べ、生き生きとした表情へと変っていた。
「さ、さすがは、ご主人サマっスゥ!!」絹絵が、渡辺の腰の辺りに抱き着く。

「ほぉう。お主、やるモンじゃのォ?」電気ウナギ発電・エコの会の鯰尾 阿曇が、渡辺を褒めた。
「地味な顔してるクセに、凄いじゃん。ダサいアンタより、優秀な生徒会長になったりして?」
 巫女・美娘ダンシング部の天原 礼於奈が、橋元に冷たい視線を送る。

「……ふん、バーロー。ヤツが有能なのは、お前なんかよりよっぽど知ってるよ……」
「なに、それ……?」それを聞いた礼於奈は、悪戯っぽい笑みを浮かべる。

 その日は、『学校に突きつける意見書』を皆で考案する事を決めて、会議はお開きとなった。

「お見事です、渡辺様。この御子神 涼香……感服致しました」
 各部の部長が部室を後にする中、メイド流剣道部の部長が渡辺に声をかけて来た。

「それにしても、あの抹茶の温度……。我らメイド流剣道部も、紅茶の温度管理には腐心しておりますが、全くもって見事なモノです」
「アハハ……何の事でしょうか?」渡辺は、軽く誤魔化した。

「かつて……戦国時代の世のコト。後の太閤・豊臣秀吉公がまだ羽柴と名乗り、天下を目指していた頃、あるお寺に休息を求めた折の出来事……」
 涼香は、見透かしたような微笑みと共に、故事を引き合いに出して説明を始める。

「……その際、口が渇いていた秀吉公は三回もお茶を求め、当時まだ寺の小坊主だった石田三成さまは、三度それぞれに趣向を凝らしてお茶をお出ししたとか?」
「お茶を、三度に……しゅこ~ッスか?」話に興味を持ったのか、絹絵が割り込んできた。

「ええ……最初は温めのお茶を多めに。二度目は、普通の温度のお茶を適量。三度目は熱いお茶を、少しの量、お出ししたの」
「な、なんで、そんな出し方したんスか??」純朴に問いかける絹絵に、涼香は優しく答える。

「……最初は、疲れて休息を求めてきたのだから、喉が渇いているだろうと、温めのお茶を多めに。二度目は、ある程度口の渇きも潤されたからと、普通の温度のお茶を普通の量……。三度目は、既に口の渇きは潤された筈で、今度はお茶の風味を味わっていただこうと、熱めのお茶を少量お出ししたのよ」

「へ~。気の利く人ッスねえ? 三成さんって!」
「渡辺様も、会議の白熱した議論を予測して、逆算してお茶をお出ししたのでは無くて?」
「偶然ですよ。オレは石田 三成みたいな、立派な戦国武将じゃありませんから」

「あら、そうでしょうか? ウフフ……」
 御子神 涼香は、名前通りの涼しい笑みを浮かべて、部室を出ていった。

「……ホントにオレは……そんな大した人間じゃないんですよ……」
 渡辺は、部室の片隅の写真立てに向って呟いた。
(……だってオレは、先輩がどこに居るのか……無事なのかさえ……)

「さっすが! アチシのご主人さまッス~!」
 絹絵が渡辺の胸元に向って、勢いよく飛び込んできた。
「……うあっ! 危な!?」二人はもんどり打って、後ろに倒れこんだ。

「けんそんするトコもカッコいいッス! 素晴らしいッスゥ~!」
 絹絵は渡辺の顔に頬を摺り寄せて、抱き付き続ける。

「絹絵ちゃん! 女の子なんだからそんなに軽々しく抱きついちゃダメだよ」
 表面上の対応とは逆に、渡辺は絹絵の体温だの温もりだのが、何故か心地よかった。

(明日からまた頑張ろう。茶道部の火を消さないためにも……足掻いてみるよ、……先輩)
 写真立ての中の女性は、いつものうに優しく微笑んでいた。

 

次回・天の川

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