ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第5章・7話

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少年と剣士

 一行は再び、『ルーシェリア配下の魔王』が住むという城のある山を登り始める。

「ネリーニャ、ルビーニャ……大丈夫? キツくない?」
「フン……我は死霊の王なるぞ!」「この程度の山道で根を上げると、思っておったのか?」
 虚勢を張る双子たち。彼女たちの髪は、まだリボンで結ばれたままだった。

 山の山腹辺りまで登って来ると、白紫の髪をした剣士が、魔物の軍勢と戦っているのが目に入った。
「だ、誰なんだ? 魔物の大群を相手に、たった一人で戦ってるよ!?」
剣士に立ち向かう魔物の群れは、徐々にその数を減らしている。

「ヤツの方が優勢な様じゃな。それにしても、二刀流の剣士とは珍しいのォ?」
「……二刀流? それに『黒と白』の剣だ! まさか……あの人は!?」
 ルーシェリアの言葉にヒントを得た少年は、剣士の方に向って走り出す。

「あのォ、もしかして『天酒童 雪影』さんですかぁ!?」
 大きな声で叫んだ少年の背後を、一匹の巨大な魔物が襲った。
「ムッ? 後ろだ、少年!」剣士の言葉に少年は素早く反応する。

「でりゃあああぁぁぁぁーーーーーー!」
 舞人は、『おかしなパーツがゴテゴテ付いた剣』で魔物を斬り上げる。
「ギィヤ!?」魔物はガラクタ剣によって分解され、完全に消滅した。

「やっぱ低級の魔物は、『女の子』にはならずに消滅しちゃうみたいだ……」
 舞人は、まだ能力全てを把握し切れていない剣を、太陽にかざす。

「……その剣! まさかキサマ!?」
 戦いを終えた剣士が、舞人の元に駆け寄って来た。

 雪影は、舞人の風貌を観察しながら、思考を廻らす。
(漆黒の風変わりな剣……シャロリュークが魔王城で見たという、例の『蒼髪の少年』ではないか? ここは探りを入れてみるか?)

 「……少年、名は何と言う?」
 舞人に問いかけた剣士は、少しだけ紫がかった白い髪を頭の後ろで結んで、長く垂らしている。
腰に差した二本の刀が、舞人を確信させた。

「ボクは舞人……因幡 舞人です! 雪影さん!!」
 少年は憧憬の表情で、剣士に向けて微笑んだ。
少し物思いにふけっていた剣士は、最初の少年の問いにようやく答える。

「お前の言う通り、わたしが『天酒童 雪影』だ。故あって、魔王の手下の城を攻略しに参ったところだが……そこの女子(おなご)たちは仲間か?」
 切れ長でどことなく憂いを帯びた瞳で、舞人が連れ歩く少女たちを見る。

「妾が、その『魔王』じゃよ……こんな姿にされてしまったがのォ?」
 撫しつけな質問に、ルーシェリアは気分を害されたのか、宛て付けがましい返答する。

「フッ、子供の戯れごとは、あまり好きにはなれん……」
 剣士は、魔王だった少女の視線を振り切るように、歩き始める。
「まあよい。それよりその剣……名は何と言う?」

「えッ? えっと確か、『ジェネティキャリパー』って言ってたかな?」
 白紫色の髪の剣士は、僅かに呆れたような表情を見せ、舞人は顔を赤らめる。

「その剣だが、実はわたしも、ニャ・ヤーゴの武器屋で見ていた。その時は気にも留めなかったが……お前が剣を買ったのか?」「……はい。実は……」 
 少年は、偶然当たったクジによって、武器屋ごと剣を手に入れた経緯を説明した。

「なる程、お主は偶然、その剣を手に入れたと云うのだな?」「はい」
 素直で純真な少年の瞳を見て、剣士は『フッ』と笑った。
「あの、どうされたんですか?」「いや。知り合いを思い出して……な」

「だが、偶然手に入れたにせよ、いきなり使いこなしてしまうとはな。先ほどの身のこなしも、中々のものだったが、剣術の心得があるのか?」
 雪影の誉め言葉に、少年は恐縮して答える。

「剣術は、子供の頃からシャロリュークさんに憧れて、随分マネをしましたケド全然で……アレは全部、この剣『ジェネティキャリパー』の能力だと思います」

「……剣の力?」剣士の切れ長の目が、さらに細く鋭くなった。
「はい。実はこの剣には……」
 そのとき、ルーシェリアが主の言葉を遮る。

「ご主人サマよ、ここがヤツの城じゃ」
 一行が見上げると、何故か『黄金色に輝くド派手な城』が、目の前にそびえていた。

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