ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第01章・05話

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廃坑

「あの山を登るわ。大丈夫かしら」
 時澤 黒乃は、遠くの山を指差して言った。

「ああ、あれくらいなら……別に」
 ボクはどうやら、女の子の前で強がっているらしい。

「じゃあ行きましょうか? 道は判ってるから、先導するわ」
 時澤 黒乃は軽快に歩き始めた。ボクも遅れまいと、必死に後を追いかける。
市街地を抜ける前に彼女は、アイスクリーム屋に寄ってなぜかアイスを買った。

 周りを小さな山々に囲まれた街を出て、大した標高でもない山を登っていく。
ちょっとした森林浴を満喫しながら、歩みを進める黒乃とボク。
目の前のスカートの中で、張りのある柔らかそうなヒップが交互に揺れる。

「こ、これは……!?」
 普段はフィギュアで十分と言っていたが、自分が男だと実感せざるを得なかった。
小一時間ほど山道を歩いて山腹まで登ると、古びた木で組まれた廃鉱の入り口があった。

「……鍵が壊されてる。これもキミが?」
「かなり錆びてたから、ザイルで叩いたら簡単に壊れたわ。でも、確かにこれだと、外から見つかっちゃうかもね。カモフラージュする必要があるわ」
 彼女は起用に錠前を直して、鍵が掛かっているかの様に扉を細工する。

「これで良しっと。行きましょう」「こ、こんな場所で、何をどう引き篭もるって言うんだ?」
「いいから付いて来て」黒乃は何の躊躇も無く、坑道の中へと足を踏み入れる。
 ボクも恐る恐る、後に続いた。

 中は昼間だと言うのに真っ暗闇で、黒乃が持参した懐中電灯が唯一の光源だった。
「ホントに、何十年も放ったらかしにされてたんだな……ここは」「……そうね」
 石灰石の鍾乳洞とは異なり、無骨な岩石を掘り抜いた通路が、アリの巣の様に張り巡らされている。

 土に半分埋まったトロッコの線路や、錆びついた重機を横目に、坑道を下へ下へと降って行く。
「どこまで降りる気だい。これじゃ、山に登った以上に降ってるんじゃ……?」
「そうね。もう地表や海面より、低いんじゃないかしら」時澤 黒乃は急に立ち止まる。

「着いたわ。ほら、アレを見て」そこには巨大な地下空間が広がっていた。
彼女は指差す代わりに目的の場所を、懐中電灯のLEDライトで照らし出した。
「ん、何なんだ? あの装置はッ……!?」

 闇に浮かび上がったのは、『カプセルらしき物体』で、人が横になって入れそうな大きさだった。
それが二つ、平行して並んでいる。
「カプセル……一体なんの? どうして、こんな場所に!?」

 近くには制御装置らしきモノがあり、そこからは無数のコードが伸び、その先端は暗闇へとフェードアウトしていた。

「宇宙斗。あなたは『これが何なのか』、大よその『見当』は付いてるでしょう?」
 後ろで何やらゴソゴソし始める黒乃。
「え? ああ……う、うん」それは、事実だった。

 けれどもボクの頭脳は、彼女が『宇宙斗』と名前で呼んだ事の方に、強い反応を示す。
「なに?」「え……いや、なんでも無いよ」ボクは、後ろから聞こえる声に、頬を赤らめた。

「この装置、まさかキミが?」「……ええ、そうよ」
「これだけの装置を、キミ一人で造ったって言うのか?」
 彼女は答える代わりに、後ろからボクの手を装置のスイッチへと誘導した。

「ここは鉱山の地下……安定した地盤の場所よ。コードは、近くの熱泉に繋げてあるわ」
「つまり、地熱発電ってこと? このカプセルの動力源なんだろ?」
「そうよ。流石は宇宙斗ね!」黒乃は、子供みたいに浮かれた声を上げる。

 彼女の体が、ボクの背中にピタリとくっついた。
シャツ一枚、隔てて密着した彼女の体は、木漏れ日の様に温かく、柔らかな感触が背中に伝わる。

「く、黒乃……ま、まさかキミ……今!?」
 目の前の装置に興味を持って行かれていたボクは、この時始めて背中の彼女の容姿に気をかける。

 地面には、紫陽花を思わせるチェック柄のスカートや、制服が脱ぎ捨ててあった。

 

次回・五種類のアイス

一千年間引き篭もり男・第01章・06話 - ラノベブログDA王