ラノベブログDA王

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萌え茶道部の文貴くん。第三章・第一話

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廃部勧告

 それは、当然の結果として、起こるべくして起こった。

 『部室棟の解体通告』及び、『所属クラブの廃部通知』が突然、オワコン棟の各部活に突きつけられたのだ。それに納得の行かない住人たちが、大挙して茶道部の部室入り口に押し寄せたのである。

 なぜか茶道部に所属する、生徒会長・橋元 蒔雄(はしもと じゆう)に、抗議をするのが目的だ。

「どう言うことよ! 一学期で廃部しろ……だなんて、あんまりじゃない!」
 頭に宇宙人の触覚みたいなカチューシャをした女の子が、激しくまくし立てる。
               (未知との遭遇部・部長 愛澤 柚葉)

「ボクらの拠点(ベース)の部室棟までもが、解体だなんて。素直に、イエス・サーとは言えないな」
 迷彩柄のスクール水着に、腰にガンホルダーを装備した少女も喰い付いた。
               (水鉄砲サバゲ部・部長 栗林 伊吹)

「ナース服を学生服として採用させる我が部の野望は、まだ達成されておりませんわ!」
 ナース服を着ていても、グラマラスとは正反対なプロポーションの、お姉さんも続く。
               (ナース服・学生服化推進委員会・部長 香住 癒音さんだ)

「反対ガオ! 反対ガオ~! 絶対ぜ~ったい反対~ガオ!」
 首長竜を模した帽子を被った幼女が、ガオガオ言っている。
               (恐竜なりきる部・部長 海野 龍穂ちゃん) 

「許可を出しておいてアレだケドよ。沙耶歌や学校側が、オワコン棟ごとキワモノ部を丸ごと潰そうとするのも、無理からぬコトだわ……」
 橋元は、『コスプレパーティーの様相を呈する茶道部の入り口』を見て、頭を抱えた。
 

「……ん、何か言った? 橋元!」未知との遭遇部の部長、愛澤 柚葉が詰め寄る。
「いや、別に。それより柚葉。お前、語尾に『ポヨン』とか付けてなかったっけ?」
「う、うっさい、話を逸らすな! 今は廃部や解体の話をしてるんだ!」

「そうだガオ! 話を逸らすなガオ!」恐竜なりきる部の部長、海野 龍穂も参戦する。
 各部活の部長だけでなく、構成員までもが橋元に激しく詰め寄っていた。

 部室の慌ただしい喧騒を、外の廊下から確認する渡辺と絹絵。
「なんだか、大変なことになっちゃったッスね? ご主人サマ」
「……さながら、汚職のバレた悪徳政治家と、不正に納得のいかない市民団体といった様相だな」

「だからオレに言われてもだなあ……」
 大勢のキワモノ部員の集中砲火を浴びた橋元は、ささやかな反撃を試みる。
「学校側で決まったコトなんだぜ? もう理事会も通って、工事の日程も決まってるんだってよ。生徒会がどうにか出来るレベルの話じゃないんだって!」

 その一言が、廃部と部室棟の解体を同時に言い渡された、大勢の心に火を着けた。
「だったら何のための生徒会なのよ!」
「生徒の意見を反映させるのが、生徒会の役目っしょ?」
 抗議の圧力は更に増し、集団真理も作用してか、各自が理性を抑えられなくなっている。

「……こりゃマズイな。険悪なムードにまでなって来てる。このままじゃ……」
 橋元だけでは収集が付かないとみた渡辺が、助け舟を出す決心をした。
「こうして集まっていただいて、ホントに申しワケ無いんだが……」

 橋元も含めた皆が、渡辺に注目する。
「見ての通り、ウチの部室も手狭なんでね。全員を部室に入れて話し合うのも無理があります。ここはどうでしょう? 各部の部長だけ出席してもらって、今後の対策会議を開きませんか?」

「そ、そうね」「少なくとも、作戦会議は開くべきか?」「りょうかいガオ」
 怒り心頭の部員たちではあったが、渡辺の提案ももっともなのと、渡辺自身が茶道部の部長で、被害の当事者の一人でもあった為か、皆素直に従った。

 渡辺と絹絵は、やっと部室に入る事ができた。

「サ、サンキュー、渡辺。助かったぜ」「まったく、火に油を注いで、どうすんだ」
 渡辺と絹絵は、長い机をはさんだ橋元の前の椅子に座った。

「……ゴメンね。ホントは今日、ささやかながら、絹絵ちゃんの『新入部員歓迎茶会』をやる予定だったんだ。それが、こんなコトになっちゃって……」
 申し訳無さそうに頭を垂れる渡辺を見て、絹絵は慌てる。

「ア、アチシなんかにお気を遣わないでいいッスよ。昨日、可愛いお茶碗まで買っていただいたのに……お気持ちだけで十分嬉しいッス!」
「……いや、改めて開くよ」渡辺は、藤色の抹茶茶碗の向こうに飾られた、写真立てを見た。

「ボクも、新入部員だった去年は、先輩方にお茶会を開いてもらったんだ。それで……やっぱうれしかったんだよ」「ご主人サマ……」
 絹絵が、渡辺の心遣いに感動していた机の向こうで、橋元が呟く。

「どうせ、何を話し合ったって、決定は覆らないと思うぜ?」
「でも、努力だけはしないとな」「そ、そうっスよ!絹絵は、廃部阻止のためにここに来たっス!!」
「とりあぜず、一時間後。代表者がこの茶道部に集まるよう、連絡を入れておいた」
 渡辺は、連絡を飛ばしたスマホを見せる。

「お前、余計なコトすんなよォ。会議で口撃に晒されんの、オレなんだぜェ!?」
 橋元の嘆きは、かなりの間続いた。

 

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