ラノベブログDA王

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萌え茶道部の文貴くん。第二章・第ニ話

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茶道部の新入部員

 渡辺は、抹茶茶碗を洗ってスチール棚に戻すと、美少女フィギュアを中に入れ飾る。

「喜べ、渡辺!」更にしばらくすると、橋元が何時ものように慌しく入って来た。
 渡辺は既に気を取り直し、心の襟を正しており、橋元の分の抹茶を用意してやる。
「で、そんなに慌ててどうしたんだ?」渡辺は、問いかけた。

「聞いて驚くなよ……渡辺! 待望の新入部員だ!」
 橋元は、作り立ての抹茶を飲みつつ、茶色い黒砂糖の饅頭をほお張りながら叫んだ。
「ええッ! 新入部員ーーッ?」渡辺は、素っ頓狂な声で反応する。

「し、しかし、どうなんだ? 今さら入部したところで、この部室棟は取り壊されるんだぞ?」
 橋元は、マンガや携帯ゲーム機の詰まったカバンを枕にして、畳の間に寝そべった。
「だからって、いきなり廃部はね~わ~。どうなるんだよ、オレの憩いの場は?」

「貴様の憩いの場など、知ったことでは無いわ! 伝統ある茶道部が、この古びた部室棟ごと、廃部の憂き目に遭おうとしているのだぞ?」
「で?どうすんの、部長?」渡辺の長台詞は、完全にスルーされた 。

「確かに、今さらだとは思うがよ。ともあれ、部室が華やぐのは悪いことじゃない!」
「その言葉尻からすると……女の子か?」 
「ま、会ってのお楽しみってヤツだ」橋元は、含みのある笑みを浮かべた。
「早速行ってやんな、『茶道部の部長さん』よ。今、生徒会室で待たせてあるから」

「待たせてあるって……お前?」
 渡辺は反論を試みようとしたものの、上手い言葉が思い浮かばなかった。確かに部長としての責務も感じたので、言われたとおり生徒会室に向おうとすると、橋元が後ろから声をかけて来た。

「ま、そう気に病むな。先輩のことも、燃えちまった部室のことも、別にお前のせいじゃないさ」
「だけど……茶道部が、他の部活にまで迷惑をかけたのは、事実だよ」
 渡辺は振り返りもせず、その場を立ち去った。

 渡辺は生徒会室に着くと、後ろのほうが近い……と言う単純な理由で、後方の扉から入った。
普段は生徒会の役員でごった返している部屋も、今は閑散としており、ただ一人『新入部員であろう少女』だけが、用意された椅子にポツンっと座っている。

「……あ、キミが茶道部に入部希望の子だね?」
 少女は声に反応して後ろに振り向くと、大きくつぶらな瞳で渡辺を見る。
頭はクルクルとカールしたクセ毛で、目はかなりの垂れ目だった。

「は、初めましてっス、ご主人サマ。そ、その説は、助けていただき、アリアトッしたーーッ!!」
 少女は勢い良く噛んだが、立ち上がって渡辺に深々とお辞儀をした。

「あ……ええッ、! ご……ご主人サマぁ!?」
 『ご主人サマ』と呼ばれた意味がわからなかった渡辺は、少女の様子を伺う。
けれども少女は、大きくつぶらな瞳で食い入るように、渡辺の顔を見つめるだけだった。
(な、なんなんだ? ネットとかでたまに流行る、『そう言う設定』ってヤツなのだろうか?)

「え~っと、キミの名前は? どうして茶道部に入ろうと思ったの?」 
 渡辺は、無難な言葉を当てながら、少女の容姿を観察する。
(制服はセーラー服をチョイスしたのか? スカートは短いし、茶色と焦げ茶色の縞模様をした、『ふわふわの大きなポシェット』みたいなのを、腰に下げるな。流行ってるのかぁ?)

「……ご主人サマがピンチと聞き、この『田城 絹絵』、居ても立ってもいられず駆けつけたッス!」
 少女は、渡辺の想像を遥かに上回る答えを返して来た。
(ピンチ? わ、ワケがわからん。ど、どうするッ!?)

 困り果てた渡辺だったが、新入部員から入部届けを受け取る。
とりあえず名前は判明したので、そこから糸口を見つけることにした。

「え、え~っと、『田城 絹絵』さん……て言うんだ。キミ、何年生?」「一年生ッス!」
「茶道の経験は?」「まったく無いッス!」
「……さっきも聞いたけど、どうして茶道部に入ろうと思ったんだい?」
 渡辺は、一番聞きたかった事を聞いた。

「ご主人サマがピンチだからッス!」「ピ、ピンチって……?」
「ご主人サマの大事な茶道部が、建物もろ共、取り壊されちゃうって聞いたッス。きっと悪の組織の仕業っす! 断固、阻止するッス!」 「ああ、そーゆーコトね」
 渡辺は、何となく話が見えて来た様な、来ない様な気がした」

『絹絵』と名乗った少女は、渡辺の前にちょこんとしゃがみ込み、目を輝かせている。
(なんか、小動物っぽい子だな)

「……まあいいや、とりあえず部室においでよ」「はいっス」
 二人は、茶道部の部室に向かった。

 

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