ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第4章・10話

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溢れ出す死者

「こっちだ、がい骨! ボクに追い付けるかな!?」
 舞人は、リーセシルたちから敵の目をそらすために、駆け出した。

「久々の地上よ。直ぐに遊び相手が居なくなっては、詰まらん。お前たちには、たっぷりと時間をかけて絶望を味あわせてやろう!!」
 『ネビル・ネグロース・マドゥルーキス』は、舞人の意図を察したが、あえてその思惑に乗る。

 ネビルは、青白い炎を周りに出現させ、それを舞人に向け放つ。
「グッ! うわあ!」「クククク……最初の威勢はどうした? 小僧!」
逃げるのが精一杯の舞人は、何とか着弾を交わすものの、その度に街が破壊された。

(マ、マズいよ。アレじゃ舞人くん、直ぐにやられちゃう。でも、甦生魔法なんて一人じゃ……)
 リーフレアを蘇らせるための甦生魔法は、天才と謳われたリーセシルであっても、かなり長い時間の詠唱を要した。

「あッ、わわッ!?」双子の姉が心配していた矢先、舞人は瓦礫に足を取られ転んでしまう。
「ン……もう終わりか? つまらぬ弱者よ……」
 舞人を大した相手では無いと見たガイコツは、それまでで最大級の青白い炎を放つ。

 街中に、巨大な爆発が広がる……かに思えたが、そうはならなかった。
「グッ……ウウウオオオーーーッ!!」舞人の腕が、青白い炎を受け止めていた。
「小僧、キサマ、一体!?」「舞人くん……キミは?」炎は、かき消される。

「ボクはね、リーセシルさん。ある剣のおかげで、闇の力を打ち消す能力を得たんだ」
「ある……剣?」リーセシルの脳裏に、武器屋にあったガラクタ剣が思い浮かぶ。
「どうした、降りて来い! ボクが相手をしてやる!」舞人はネビルに向かって、大声で叫ぶ。

「なる程な、小僧。先にも我が一閃を弾き飛ばしたが、その力を使ったのだな?」
 ネビルは、カタカタと口を開いた。

「闇を打ち消す力が、どれ程かは知れぬが小僧。キサマは、接近戦を狙っているのであろう?」
「なッ!?」青白いガイコツは、慌てふためく眼下の少年を見降ろす。

「このネビルに接近させて、我が闇の力を奪い、無力化して一気に決めるつもりであろう?」
「そ、それは……だから……」舞人の思惑は、全て読まれていた。

「まあ良い。少しばかり愉しませてくれた礼に、キサマに良い物を拝ませてやろう」
「良いモノ? な、なんだ!」舞人は咄嗟に、拳を握り身構える。

「このような小さな街であれば、必ずや街の中に存在するハズ……ククククククク」
 黒いローブの骸骨は、鮮やかな宝石の散りばめられた杖を取り出すと、詠唱を開始した。

「これぞ、我が名の由縁にして、我が最も得意とする秘術……『リ・アニメーション!!!』」

「何なんだ? 一体、何が起きた!?」
 舞人は様子を伺ったが、直ぐには何も起きなかった。

「きゃあああああああッ!?」「し、死体がぁ!!」
 だがそれは、街の人々の『恐怖』となって具現化する。
大量の死者たちが『墓地』から蘇り、街の中心に向って『無言の行進』を始めたのだ。

「我は死霊使い……『ネクロマンサー』の王なるぞ!!」
 ネビルの名乗りと共に、死者の軍団が街の中心部へと雪崩れ込む。

「さあ、我が僕たちよ。全ての生者を喰らうが良い! 満たされることの無い空腹が、満たされるまで永遠に……な。クククククク!!」

「うわああ……ば、化け物がぁ!?」「ひゃああ、か、噛みつかないでェ……アグッ!!」
 死霊の王の命令に従い、ゾンビ、グール、スケルトンといったアンデッドモンスターの大群が、街の住人や舞人たちを襲い始めた。

 舞人は双子姉妹の前に立って、襲い掛かる敵を素手で必死に振り払う。
「これは……いくら肉体を『遺伝子改変』されていても、ヤバそうだな……」

 リーセシルはただ、妹に甦生魔法をかけ続けるしか無かった。

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