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萌え茶道部の文貴くん。第一章・第一話

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萌え茶道の極意

 

 茶道とは~『侘び・寂び・萌え』の三つの要素を、取り入れなければならない。


「これは、我が『愛理大学付属名京高等学校・茶道部』の究極の教えなのだッ!」
 愛知県のそこそこのレベルの大学に付属した、今どき珍しいマンモス高校。

「……いや、むしろこの世の真理と言っても過言ではありまい?」
 無計画に建てられた、年代もデザインもバラバラの校舎の間を縫うように突き進み、さらにその果ての果てに存在する、草臥れた部室棟の一室。

「この『楽茶碗』……らしき茶碗! オレが『骨董品店』……などと言う高尚な言葉など、全く似つかわしくない街外れのリサイクルショップで、税込み九百八十円で購入した一品だ!」
 メガネの男子生徒が一人、抹茶茶碗を年季の入った布で、ピカピカと黒光りするまで磨いていた。

「『抹茶茶碗』とは茶道において、最もシンプル、最もオーソドックスにして、個人の趣味嗜好が最も反映する品と言って過言ではあるまい。……だが、それは所詮、器に過ぎんのだ!」

 メガネの生徒のもう片方の手には何故か、『美少女フィギュア』が握られていた。
「抹茶茶椀が生み出す『調和』の小宇宙に、存在意義を与えるのが、この『まじかるタツホちゃん二十四分の一サイズ』なのだ!」

 生徒は抹茶茶碗を棚に置き、手にした美少女フィギュアを中に入れて飾った。
「宇宙の星々は人がいてこそ、始めて存在する価値を持つ。それと同じだ! 解ったか、橋元!」

「……いや、まったく」二つくっつけて並べられた長机の向こう側……。
 茶髪でチャラい装いの男子生徒が、脚を机に投げ出し漫画を読みながら答えた。

「何言ってるのか、意味不明でまっったくわからん。あのな、渡辺。部長がそんなんだからウチの部活、女子がまったく寄り付かんのだろうが?」
 けれども、茶髪の男子生徒のやる気の無い瞳は、言っても無駄と解っているようだった。

「フン、女子など、この数々の美少女フィギュアで十分だろう。ま、いるに越したことは無いが……な」
「だしょ~?  ウチの部も、女子勧誘しようぜ。今のままじゃ、いずれ廃部になるのは決定的なんだからさあ。多々美ちゃんなんてど~よ? 向こうもお前に気がある感じだぜ?」 
 橋元は読んでいた漫画を机に伏せて、渡辺の方へと身を乗り出してきた。

「そうかあ? べつにそうとも思わんが……」
「大体さあ。オレとお前しか部員がいない部活が、現在も存続してるのだって、生徒会長であるオレ様の権力のお陰なんだぞ~?」

「ひなびた部活のひなびた部室で、ただダラダラしたいだけのお前が言うな。それに、今どき一学年が五百人もいるマンモス校の生徒会長が、どうしてお前なんだ?」
 渡辺は、先ほどの黒光りする抹茶茶碗に若草色の粉を入れ、ポットで湯を注ぐと、シャカシャカと茶筅でかき混ぜ始めた。

「オレ、外面(そとづら)と演説だけは自信あっからな~。ん、演説のコツだあ? 演説なんてのは、自分の言葉に『責任なんて持たない事』だ! わかったか?」
「聞いてねーよ。……っつか、お前見てると妙に説得力があってアレだがな……ホレ」

 いい感じの泡が点つと、それを橋元の前に差し出した。
「旨め~。 お前、茶を点てるのだけは上手いよな~」橋元は、グイっと飲み干した。

「そんでど~よ? 多々美ちゃん、誘っちゃえよォ~?」
 橋元は一息付くと、山世 多々美の映っている写真を数枚取り出して、渡辺の前に並べた。

「なぜ、山世 多々美をそこまで推す? 意味がわからんぞ?」
「え~、多々美ちゃんポッチャリ系だし、可愛いぜぇ? お前とならお似合いだってェ~♪」
 渡辺は、無視すると決めた。

「女の部員と言ってもだなあ、春先に勧誘のビラを大量にまいてみたが、どうにも集まらん」
 橋元はため息混じりに、饅頭などを切る楊枝を振りかざしながら、説明を始める。
「そりゃそうだろ? この部室を見学に来た女子たちが、抹茶茶碗の中にフィギュアが入ってるのを見て、引きまくってことごとく入部を断念してんだ。あの棚、なんとかしろ!」

 部室には、大きなスチール製のラック(棚)が三つ、部屋の大半を専有するように置いてあって、『抹茶茶碗』の中に『美少女フィギュア』が飾られたものが、無数に並んでいた。

「言っただろ…橋元! 茶道とは『侘び・寂び・萌え』だ!」
「……いや、最後のね~から! 『萌え』なんて、どこにも入っとらんわ!」

「かの千利休は、自分とは違う事を行えと言った。オレはそれを実践しているに過ぎん」
「利休に蹴り飛ばされッぞ。それにご大層な方針も、お前が勝手にほざいてるだけじゃあな?」「……むう、そ、それは……」

 部室の窓際には、取ってつけた様な『畳の間』があって、橋元はそこに寝転がる。
「茶道部っつっても、畳がたったの二畳じゃな~。まっ、寝っ転がって漫画を読むには、最適の空間だケドよォ」
 安価な木材で作られた、膝上くらいの高さの台に、畳が二畳だけ乗せてある簡素な造りだ。

「我が部に予算を回さんのは、お前たち生徒会だろう?」渡辺は憮然とした表情をする。
「現状、部員がオレとお前の二人じゃ部室があるだけマシと思え! 予算が欲しけりゃ、正式な部として認められる、アニメでおなじみ『お約束の五人の部員』を集めね~とな。できれば女子!」

「性別はともかく、それが集まらんから、苦労しとるんだろうが……」「だから山世 多々美を誘ってだなあ……」「どうして山世 多々美なんだよ!」

 議論は堂々巡りに終始した。

 

次回・文貴と狸

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