ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

ある意味勇者の魔王征伐~第4章・5話

f:id:eitihinomoto:20190914042011p:plain

ルーシェリア・アルバ・サタナーティア

「このコが、魔王ってさ? 本気で言ってるの……舞人?」

 ……と言いつつも、パレアナの関心は既に、舞人の連れ帰った『魔王らしき少女』に移っていた。
「確かに瞳は紅いし、信じられないくらい綺麗な肌に、綺麗な黒髪ね」

 彼女の瞳は真紅に輝き、上がった目尻は気の強さを物語っている。
 『漆黒』と表現するのが相応しい、全ての光を吸い込むかのような艶の無い髪には、独特の美しさが備わっていた。

「でも、綺麗なコだケド、わたしよりも背が低い女の子を、魔王だなんて言われてもね」
 少女の身長はパレアナより少し低いものの、腕や脚は細く長く、整った顔立ちをしている。

「えっと、彼女の名前は?」
 パレアナは、最も初歩的な質問を舞人にする。

「あッ! そう言えばまだ、聞いて無かった」
 蒼髪の少年は、いつものクセで頭を掻いた。

「妾は『冥府の魔王・ルーシェリア・アルバ・サタナーティア』じゃ!」

 漆黒の髪の少女は肩を竦めると、腕を組んでパレアナを睨み付けた。
「人間の娘よ! 恐怖と共に我が名を心に刻みつけるが良い! カーッカッカッ!」

『ゴンッ!』っと、鈍い音がする。
 舞人は、ガラクタ剣でルーシェリアの頭を、軽く叩いた。

「痛ったぁぁ~~いのじゃ! いきなり何をするのじゃ『ご主人サマ』よ!」
「ご、ご主人サマ!?」
 パレアナは、ルーシェリアの舞人に対する呼び方に反応する。

「……あのなあ。今のお前が偉そうに高笑ったところで、ただの普通の『人間の女の子』なんだから、パレアナが恐怖するワケ無いだろ?」
 舞人は、頭にできたタンコブを撫でている、漆黒の髪の少女に言った。

「おのれぃ! 妾を『こんな体』にしたのは、ご主人サマなのじゃぞ! これでは、おめおめと冥府へも戻れんわ! 『責任』は取ってくれるのじゃろうなぁ? ご主人サマよ!?」
 ルーシェリアは、紅い目にいっぱいの涙を溜めながら叫ぶ。

(『こんな体』……! 『責任』……?)
 パレアナは、小さく震え始めた。

「ハン! 『責任なんて取るワケ無い』だろ? お前は一生、その小さな体のままで生きて……」
 そう言いかけて、背中に殺気を感じた舞人は、会話を中断して振り返る。

「マ~~イ~~トォ~~ッ!」
 そこには幼馴染みの少女が、鬼の形相で立っていた。
「どッ! どど、ど……どうしたんだよ? パレアナ!?」

「アンタ、いつから悪魔に魂を売ったああああぁぁぁーーーーーーーーーーーーーッ!!?」
 舞人は、ボコボコにされた。

「……いや、だから誤解だって、パレアナ。彼女はホントに、魔王なんだ。この剣の『能力』で、魔王が人間の女の子の姿になっちゃったんだよォ!!」

「フン……まだ、ワケの解らないコト
言って!!」
 少女は聞く耳を持たず、舞人を外へと放り出すと、ルーシェリアを連れて教会の中へ入る。
「この剣も没収しとくから! 女の子を剣で殴るなんてサイテー! 信じらんない!」

「パレアナ! だから、誤解だってェ~~!」
 それっきり教会の正面扉は固く閉ざされ、開くことは無かった。
仕方なく舞人は、夜の帳の降りたニャ・ヤーゴの中心街へと向う。

「……まったくパレアナの奴! 久しぶりに会ったってのに、この仕打ちかよ!」 
 ブツクサ言いながらも、少年は現実的に財布の中身を確認した。

「あれから少しは仕事をして稼いだけど……残り四百ダオーか? これじゃ、オークバーガーか、リザード丼くらいしか喰えないな~」

 少年は星の瞬く夜空を見上げる。
「仕方ない。久しぶりに、自分の武器屋にでも行ってみようか。まだ二ヶ月、『商売しる権利』が残ってるハズだし、一応はボクの土地だから、最悪そこで寝るかぁ」

 舞人は、腹に食べ物を入れる目的と、寝床の確保のため、街の市場へと向かった。

 前へ   目次   次へ