ニャ・ヤーゴ会議の行方
背の高い椅子が並べられた、ニャ・ヤーゴ城の会議室。
グラーク・ユハネスバーグが口を開いた。
「シャロリュークよ、『謎の剣』について調査を依頼したい。『消えた魔王』に関わりがあるとなれば、急を要する。無論、貴殿は名が知れ過ぎている。自ら動くことは得策では無いが……」
「なればグラーク公。我ら双子が調査に参ります」「調査する……」
シャロリュークに替わって、グラークの要望に応えたのはリーセシルとリーフレアの、双子司祭だった。
「ウム、適任だな。お願い出来るかな、美しい双子の司祭たち?」
「ハッ! 必ずや」「任された~♪」
仰々しく答える妹と、ホワホワ答える姉。
「……し、しかしですぞ。王都への報告は、どうするのです?」
軍議の開かれている城の主であるにも関わらず、これまで全く会話に参加せず、影の薄かったニャ・ヤーゴ領主・ホアキン・ケーストがオドオドと口を開いた。
「それは、わたしの部下に対処させよう。貴殿も此度の戦、我らの到着が遅れたにも関わらず大軍相手に持ちこたえ、見事な働きであったと、貴方の王にご報告する故、安心されよ」
美麗なるプリムラーナ・シャトレーゼ女将軍の言葉に、小領主は顔を赤らめて恐縮する。
「オレも久しぶりに、王都に顔出すかなあ? 今後の対処について、王と話し合わねえとな」
「なら、わたしも行くわ。本音は、久しぶりに皇女さまに合ってみたい……ってんじゃなきゃ、問題無いよね~シャロ?」
パッションピンク色の髪の幼馴染みに対し、表情を曇らせる赤毛の英雄。
「そんなんじゃね~よ、カーデリア! 皇女っつったって、まだ十五歳のガキじゃねえか?」
「『神澤・フォルス・レーマリア』皇女殿下に最後に会ったのは、もう三年も前じゃない! 女の成長は、早いのよ~」
「ガキには変わんねえよ!」
二人のやりとりを、プリムラーナ・シャトレーゼは微笑ましく見ていた。
「仲が良いのだな。では、二人にお願いしよう。我が部下二名と共に、ヤホーネス王に此度の戦の報告を行ってくれ」
「おう! 今日の内に出発だ。 情報は速い方が良いからな」「任せて下さい!」
シャロリュークとカーデリアは、息の合った答えを返した。
「シャロリュークよ……魔王ルーシェリア・アルバ・サタナーティアが消えた今、ヤツの部下どもの動向も気掛りだ。わたしもしばらくパーティーを離れるぞ」
「おう。了解だ、雪影……つっても、お前の場合『武者修行』の割合いが大きいんだろ?」
「何だよ、雪影。相変わらずストイックだなあ。オレさまは、どうしよっかな?」
それを聞いた領主・ホアキン・ケーストが、慌てで引き止める。
「クーレマンス殿は、是非とも城に残っていただきたい。貴殿の『ヴォルガ・ネルガ』は、オークやゴブリンどもを相手には、頼もしい限りですからな」
それを聞いて、顔をキリっと引き締める筋肉男。
「そっかぁ? やっぱオレさまは、頼りになるからな」
「何受かれてんのよ? つまり、『雑魚専門』ってコトじゃない」
「そ、そうなのくわああぁぁ~~ッ!!?」
怒り散らすクーレマンスを余所に、一同はそれぞれの目的に取り掛かった。
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