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ある意味勇者の魔王征伐~第3章・8話

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グラーク司令官とプリムラーナ将軍

  崖の上には、魔王の城を構成していた瓦礫の山が、大量に積みあがっていた。

「ふ~、やれやれだわ。アンタのマッチョも、たまには役に立つのね~?」
「ウッセーよ、カーデリア。それよか、外の戦況はどうなった!?」
 直ぐに、丘の下が見渡せる場所へと駆け出す、大男。

「まさか魔物の軍隊にやられて、敗走しちまったんじゃねえだろうな。雪影の別動隊が加わったとはいえ、劣勢に変わりはねェかんな!」
 クーレマンスは、ヴァカンベル平原で魔物の大群と対峙していた、ニャ・ヤーゴ軍を心配する。

「心配ね~よクーレマンス。どうやら援軍が到着してたみて~だ」
 シャロリュークの剣が指し示す方向には、装備を『オレンジと黒』に統一した軍隊と、『青とシルバー』に統一した軍隊が、それぞれに展開していた。

「『オフェーリア王国』のグラーク公と、『フラーニア共和国』のプリムラーナ公ですね」
 二つの軍隊によって魔物の大群との戦局は、既に終焉へと向かっている。

「オフェーリア王国のオレンジ色の鎧は、新規に開発された『人工オリファルコン』の合金って話だぜ。それが一般兵まで装備してるんだから、強いワケだぜ!」
 クーレマンスが、オフェーリア軍の装備を称賛した。

「でも、青い鎧のがお洒落で素敵よ。なんでもフラーニア共和国の銀のチェーンメイルは、魔法を弾き、魔力を増幅されるのよ!」
 カーデリアも負けじと、フラーニア共和国軍の装備を褒め称える。

「オフェーリア王国の軍隊ってさ。まるで渦巻きみたいに動いてるよ、シャロ?」
 丘の上から、軍の動きを観察していたリーセシルが、赤毛の英雄に質問した。

「オフェーリア王国軍が、得意とする戦術だな。時計回りに軍を動かして、次々に新手の部隊を戦場へと送り込むのさ。そんでもって、渦の中心にいるのがグラーク公。こんな高等戦術を指揮できるのは、彼くらいのモノさ」

「ですがフラーニア共和国の軍も、負けてませんよ。女性の兵も勇敢に戦ってます!」
 妹のリーフレアも、負けじと張り合う。

「フラーニア軍の特徴は、性別や人種、種族を問わない多様性にある。それそれの部隊に個性的な将軍を配するコトから、『宝石を散りばめた様な軍隊』の異名を持つんだぜ」
「それに軍を指揮されている将軍は、とても綺麗なお方ですね?」

「ああ、アソセシア一の美女とも名高い、プリムナーラ将軍だ」

「シャロ! なに鼻の下、伸ばしてんのよ!!」
「お前もアレくらい、色気があったらなイテテッ!?」
 英雄は幼馴染みに、ワキ腹の肉をおもいっきり捻られた。

 眼下の戦いが終わると、覇王パーティーは丘を降り、2つの国の軍隊と合流する。
すると、向こうも気付いたのか、覇王パーティーに声をかけて来た。

「遅れて済まぬ。途中、魔物の大群に待伏せされて、粉砕するのに手間取ったのだ」
 黒とオレンジの軍装の司令官、『グラーク・ユハネスバーグ』だった。

「魔王の城が、崩れ落ちるのを見ました。流石は誉れ高き勇者『シャロリューク・シュタインベルグ』と、『覇王パーティー』だ。わたしも感服いたしたぞ」
 可憐なる金髪の美女、『プリムラーナ・シャトレーゼ』女将軍が、一同に賛美の言葉を送る。

「いや……それがだなあ。実は魔王は、倒してないんだ……」
 シャロリュークと覇王パーティーは、魔王城での経緯を二人の軍のトップに報告した。

「何と、それは誠か?」
「にわかには、信じられんな」
 二人の指揮官は、眉間に深いシワを寄せる。

「だが戦さの直後で、兵士の消耗も激しい。とくに、我々が到着するまで持ちこたえてくれた、ニャ・ヤーゴの地方軍の被害は甚大だ」
「同感ですね。では対処の仕方は、ニャ・ヤーゴ城に帰還した後、軍議を開くコトと致しましょう」

 2人の有能な指揮官に率いられた軍隊は、規律正しい動きで帰路に着いた。

「なんとか小領主の軍も、生き残ったみてーだぜ。雪影のヤローのおかげかもな」
「めでたしめでたしってトコかしら。ね、シャロ」

「結果的にはな。だが、魔王らしき者は居なかった」
 赤毛の英雄は、後ろを振り返る。

「それに、あの『少年』と『少女』は一体……?」
 崩れた魔王城の瓦礫の山が、あるだけだった。

 赤毛の英雄の抱いた疑問。それは後に、人間と魔物の戦いに大きく影響を及ぼすコトとなる。

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