ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

この世界から先生は要らなくなりました。   第10章・第48話

クリティカル・テック・ストライカー

「地球の破滅を目論む、ダーク・フォレスター。今度は、こっちから行くよ!」
 アイドルライブのステージで、戦闘員と戦う4人の少女たち。

「クリッター・ピンクの、ピンク・クリティカル・キックをお見舞いだァ。トウッ!」
 フリフリのスカートを大きく翻(ひるがえ)し、脚を高く上げて回し蹴りを入れる、ルミナ。
戦闘員は上半身と下半身に分断され、床に崩れて消滅した。

「流石は、切断王女(ギロチン・プリンセス)。情け容赦なく、残酷だぜ」
「で、でも、子供向け番組なんだよね?」
「実は設定年齢は、高いらしい。でも子供が間違って見て、泣き喚(わめ)くって話だぜ」

 原作アニメについて、ボクは詳しくは無かったものの、子供が見て泣く姿は容易に想像が付く。

「喰らいなさい、ダーク・フォレスター。グリーン・トルネード・アロー!」
 ジゼルが弓に複数の矢を番(つが)え、戦闘員に目掛けて放った。

「今度はドリルみてーな矢が、一斉に飛んでったぞ!」
「敵の身体、貫通しちゃってるし」
「これじゃ、どっちがヒロインだか判んないよ」

 原作を知らない観客の多くが、ボクと同じようにドン引きしていた。

「ボクだって、負けてられないね。イエロー・ローリング・サンダー!!!」
 クロルの重ねた拳に、電流がバチバチとスパークする。
電気を帯びた2つの拳が、戦闘員たちを次々にブッ飛ばして行った。

「まるでアニメみたいに、戦闘員が宙に飛んで行ってる」
「普通のヒロインのショーじゃ、お目にかかれない演出だな」
「でも戦闘員のお腹、穴が開いちゃってるケドね」

「ヤレヤレだよ。どうやら彼女たちの演出スタッフは、ずいぶんと悪ノリしているね」
 流石の久慈樹社長も、呆れ顔だ。

「あわわ、わたしも頑張らないとですゥ!」
 クリッター・ブルーのホタルが、背中から黒い甲羅を取って盾として左手に構え、突進する。

「えい、ブルー・パイル・ランサー!」
 甲羅に開いた6個の穴から、次々に杭(くい)が撃ち出されて、敵の身体を貫いた。

『グロロ、よくもオレさまの部下たちを、倒してくれたな。だがお前たちの命も、今日までだ』
 倒された戦闘員が消えると、ステージには肉食恐竜の身体にドラゴンの翼、獅子の前脚に人の頭部を持ったモンスターが現れる。

「スゲェ、デカいの出て来たァ!」
「一体どうやって、動かしてんだ?」
「あんなのと、戦うの?」

 恐竜映画に登場するティラノサウルスのように、全長10メートルはあろうかと思われるモンスター。

『我が暗黒火炎を、喰らえ!』
 人の頭部から、クリティカル・テック・ストライカーに向けて、暗黒の火炎を吐き出した。

「きゃあぁッ!」
「イヤァッ!」
 悲鳴を上げながらも、側転やバク転で炎をかわす少女たち。

「オオオッ。スカートの中は、ちゃんとパンツだ!」
「チョット、どこ見てんのよ!」
「イデデデデッ」

 モンスターは巨体を揺らしながら、黒炎のブレスを吐き散らした。
次第に追い詰められる、クリッターの4人の少女たち。

「こ、このままじゃ、行けない!」
「みんな、わたし達に勇気をちょうだい」
 跪(ひざまづ)いたクリッターピンクとグリーンが、会場に助けを求めた。

「ボ、ボクたち、このままじゃ負けちゃうんだ」
「お、お願いします、みんなの勇気ある声を、届けて」
 クリッターイエローと、ブルーも観客に願う。

「な、なに言ってんだ、アイツら?」
「ヒロインアニメの映画じゃ、定番の演出なんだがな……」
「まさかソレを、オレたちにヤレってのか!?」

 幼い女の子が集っているワケでもない観客席に、動揺が走った。

「クリッター……ホラ、みんなで叫んで。クリッター!」
「お願い、みんな……クリッター」

「ボクたちだけじゃない」
「み、みなさんも、クリッターなんです」

 クリッターこと、クリティカル・テック・ストライカーの4人の少女たちは、強引にステージを推し進める。

「オ、オレたちは、別にクリッターじゃないんだがな」
「胴体真っ二つにするヤツらの、仲間になんてなりたくねェよ」
 けれども会場の反応は、すこぶる悪かった。

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一千年間引き篭もり男・第08章・55話

最悪の結末(バッドエンド)

 地球から見れば、点よりも小さな存在でしか無い、謎のサブスタンサー。
けれども地球の全域には、謎のサブスタンサーによってもたらされたと思われる、無数の隕石群が雨のように降り注いでいた。

「ど、どうしちまったんだ!」
「ドス・サントス代表の執務室が、シグナル・ロストしたぞ」
「それにこの揺れは、なんだい!」

 通信が途絶えた祖父の安否を心配する、マレナ、マイテ、マノラの3姉妹。

 セノーテのショッピングモール最上部をかすめるように落下した1つの隕石が、ドス・サントスの執務室を完全に消滅させ、蒸発させていた。

「う、上で、なにが起きてんだよ!?」
「衝撃波が、こんな地下深くにまで伝わって来るなんて」
「敵もまだ、倒せてないってのにさ!」

 シエラ、シリカ、シーヤの3姉妹が、巨大なコンドルが舞う地下空間で、大量に沸いた敵に向かって銃を放ちながら、愚痴(ぐち)っていた。

「ねえ、メイリン。アフォロ・ヴェーナーに、確認してみようラビ」
「そうだリン。トゥランさんなら、なにが起きてるか判ってるかもリン」

 セマル・グルを駆るラビリアと、メリュ・ジーヌを操るメイリン。
2人の首には、コミュニケーションリングは無かったが、その特殊能力でトゥランにコンタクトを取る。

『ラビリアにメイリンなのね、無事でよかったわ。こっちは避難民の収容に手一杯で、申しワケないケド援護には行けない状態なのよ』
 2人の少女の脳裏に、トゥランの声が響いた。

「ドス・サントス代表からの通信が、いきなり途絶えたラビ」
「地上で、なにが起きてるリン?」

『それは、こちらでも確認しているわ。地球に降り注いだ隕石の1つが、ドス・サントス代表の執務室を直撃したのよ』

「そ、そんなメル……」
「ドス・サントス代表は、死んじゃったリン?」
『隕石の衝突が、執務室のあった辺り一帯を蒸発させたわ。残念だケド……』

「……な、なんてこった」
「アタシらだって、ついさっきまで執務室に居たんだぞ」
「あの執務室が、消えて無くなっちまったのかッ!」

「ジイさんのヤツ、死んじまったんだな……」
「身内だって判って、大した時間も経ってねェのによ」
「代表を失って、この国はどうなっちまうんだ」

 ジャガー・グヘレーラーに乗る、6人の少女たちの間に動揺が走る。

『イイ、落ち着いて聞いて。現在地上では、無数の隕石が降り注いでいるの。謎のサブスタンサーが、地球上のあらゆる場所に隕石を降らしていると、思われるわ』

「たった1機のサブスタンサーに、そんな能力があるのか?」
「隕石って、そんなに都合よく宇宙を漂ってるモンでも無いだろ」
「まさか隕石は!?」

『ええ。異空間から呼び出されていると、推察しているわ』

「それじゃ、隕石を降らしてる謎のサブスタンサーってのは……」
「時の魔女ってヤツの、手下ってコトか」
「時の魔女は、トラロック・ヌアルピリを滅ぼしたいんだな」

『いいえ。隕石は、北アメリカだけじゃなく、地球の全域に渡って堕ちているわ。とくに、地球に生き残った人間が密集する地域に、集中的に落下している』

「だったら時の魔女の狙いは、地球に残った人類を、完全に滅ぼすコトだって言うの?」
 セノーテ下の地下空間に、1機のサブスタンサーが姿を現す。

「ハウメアも、無事だったメル!」
「よかったリン」
 歓声を上げる、ラビリアとメイリン。

「わたしだけ先に戻ったから、なんとかね。でも、セノンや真央たちが心配だよ」
 黒いサブスタンサーに乗った、ハウメアが答えた。

「ま、まさか姉キたちも……」
「隕石にやられて、蒸発しちまったんじゃ」
「チ、チキショウ!」

 シエラ、シリカ、シーヤの3姉妹が、不安を増幅させ、最悪の結果を想像する。

『大丈夫よ、みんな無事だわ。現在、貴女たちの居る場所に向かっている』

「ホ、ホントか!」
「よ、よかった」
「セシルたちも、無事なんだね」

 安堵の声を上げる、マレナ、マイテ、マノラ。

『残念だケド、朗報ばかりじゃないのよ。隕石が流星となって地球に降り注いだ影響で、地盤が崩れて海水が地下に流入し始めている。セノーテも、放棄するしか無いわ』

 トゥランの声が、最悪の結末(バッドエンド)の1つを告げた。

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ある意味勇者の魔王征伐~第13章・63話

鏡の中の死闘

「どうした。なにか、言ったか?」
 アッシュブロンドの長髪の、少年が問いかける。

「イヤ……なんでも無いさ、ティ・ゼーウス」
 サタナトスは、それ以上は自分の素性を明かさなかった。

「まあいい。そんなコトより、さっさとここから抜け出さねェとな」
 ティ・ゼーウスも、深く追及はせず、次元迷宮(ラビ・リンス)からの脱出を優先する。

「ダエィ・ダルス。ボクたちをミノ・ダウルス将軍の元へと、案内してくれないか。戦いに参加しろとはモチロン言わないし、その後は逃げるなり好きにすれば良い」

 サラサラの金髪をかき上げながら、眉も動かさずに断言するサタナトス。

「ミノ・ダウルス将軍には、お前の剣の能力は通じないのだぞ。勝算は、あるのか?」
 薄汚い姿の男は、自らを繋いでいた鎖の欠片で、伸び放題だった髭(ひげ)を剃りながら問いかける。

「勝算があるとしたら、ボクの旧知の友が追いついて来て、なんとかしてくれるのを願うくらいだね」

「オイオイ。一向に来る気配のない友達を、まだ当てにしてるのか。だったら、オレを……」
「その者なら、もう直ぐここに辿り着くだろう」
 ティ・ゼーウスの愚痴を遮(さえぎ)る、ダエィ・ダルス。

「そんなコトが、解かるのか?」
「自分の創った、次元迷宮内部のコトだからな」
 少しだけマシな顔立ちになった、天才建築家が言った。

「ヤレヤレ。ケイダンのヤツ、やっとミノ・テリオス将軍を倒したのか」
「イヤ。その者も、まだ生きておる。重傷は負っているがな」

「どうやら、お前の旧知の友ってヤツも、当てにはならん様だな」
「ホントだよ。まったく、なにをやっているのやら」
 ティ・ゼーウスに皮肉を言われ、イラつくサタナトス。

「相手も、中々の手練れだったのだろう。ミノ・ダウルス将軍を倒すのであれば、少しでも戦力が多い方が良いのではないか?」
「そりゃ、そうだがよ。仕方ない、待ってやるか」

 3人は、ケイダンを待つ選択をする。

 ~ケイダンこと魔王ケイオス・ブラッドと、雷光の3将が筆頭ミノ・テリオス将軍との戦い。
その決着は、少しだけ時を遡(さかのぼ)る~

 鏡の世界に、閉じ込められたケイオス・ブラッド。
周りを取り囲んだ無数の鏡に映る、自分自身。

「クッ! まさか自分の攻撃を、受けるハメになるとはな」
 万華鏡の中のように、無数に投影されたケイオス・ブラッドが、次々と魔王本体に襲い掛かった。

「鏡の投影の分際で、勝手に動いて主に牙を剥(む)くなど、気に喰わん!」
 師匠譲りのバクウ・プラナティスで、襲い来る自分自身の群れを斬り裂く。

「無駄だ。我が剣ジェイ・ナーズの生み出した鏡の世界では、鏡に映ったお前が傷付けば、お前自身も傷付くのだ」
 鏡の世界に響く、ミノ・テリオス将軍の声。

「ガハッ!?」
 雷光の3将が筆頭の言葉通り、バクウ・プラナティスの付けた傷が、ケイオス・ブラッド自身の身体にも刻まれた。

 完全に裂かれた胸や腰から、ボタボタと紫色の血が流れ落ちる。
魔王と言う特異な存在で無ければ、とっくに絶命してもおかしく無いホドの傷だ。

「フッ、こんなモノか……」
 魔王ケイオス・ブラッドは、自らの流した紫色の血溜まりを見つめる。

「そろそろ、トドメを刺させて貰うぞ。覚悟しろ!」
 ミノ・テリオス将軍の声と共に、周囲の鏡に映った魔王ケイオス・ブラッドが、本体目掛けて剣を突き立てる。

「イヤ、それはオレの台詞だ」
 鏡の剣に精神を集中させた、ミノ・テリオス将軍の背後の壁に空間が開いた。

「……なッ!?」
「油断したな」
 空間から現れた魔王が、バクウ・プラナティスを1閃する。

「フッ、それはわたしの台詞と、言ったところか」
 けれども時空を斬り裂く剣は、ミノ・テリオス将軍の前で阻まれる。

「お、お前は!?」
 驚きの表情を浮かべる、ケイオス・ブラッド。

 魔王の前に立っていたのは、蒼い髪の少年だった。

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キング・オブ・サッカー・第9章・EP017

思考する選手たち

「カズマも、バルガのマンマークの命令無視したの、気にしてたみたいね」
 ボクたちのベンチで、セルディオス監督が新人マネージャーと話していた。

「それって、どう言うコトですか?」
「カズマはわたしの指示を無視して、自分の判断でバルガのマンマークを外し、ボールの出どころであるスッラのマークに切り替えたね」

「やっぱ監督の指示を無視しちゃうのって、いけないコトですよね……」
 心配そうな顔の、沙鳴ちゃん。

「とうぜんよ。ウチみたいに選手層の薄いチームじゃ無かったら、そのまま使って貰えなくなるコトだってあるね。でもサッカーじゃ、選手が監督の命令を無視するの、よく有るコトよ」
「え……?」

「わたしも選手だった頃は、監督の命令よく無視したね。若かったってのもあるケド、監督の戦術があまりに酷かったり、単純に監督の性格が気に喰わなかったり」
「そ、そんなコトで、監督とケンカしちゃうんですか?」

「日本人の感覚だと、そうなるね。でも日本以外の国じゃ、互いに自分の主張を通そうとするの、当たり前の行為ね。よく中国人は我がままだど言う日本人居るケド、スタンダードはむしろ中国人。アメリカ人も、ブラジル人だって自己主張はするし、世界的に見れば日本人が異常に謙虚なだけよ」

 日本人の血も引くブラジル人の、メタボ監督は言った。

「謙虚って、ダメなコトなんですか?」
「その通りね。アメリカなんかじゃ、自分の意見を持ってない子供だと思われるよ」

 謙虚さを美徳と考えるのは、世界的に見ればごく少数だと言う事実。
そんな事実など知らないまま、ボクは監督の命令を無視し続けていた。

「御剣くんは、どうやらこのままスッラをマークし続けるみたいですね。バルガのマークは、ボクが引き継ぎましょう」
 柴芭さんが、亜紗梨(あさり)さんに告げる。

「そうですね。この試合、キックオフから常に、スッラからボールが出てました。御剣くんは、いち早くそれに気付いて、ボールの出どころを抑えに行ったんでしょう」

「ですが、カイザの動きも気になりますね。スッラが展開できない場合、先ほどのように彼がオーバーラップして、ゲームメイクをする様です」
「ええ。ボールの出どころが2つになった場合、どう対処するか……」

 亜紗梨さんが危惧したコトは、ボクが1番心配していた。

 ……ど、どうしよう。
ボールの出どころを抑えに、監督の指示を無視して、スッラさんのマークに着いたケド。
カイザさんがゲームメイクをしちゃったら、なんの意味も無いんだ。

 デッドエンド・ボーイズのそれぞれの選手が、それぞれに思考を廻らせていた。
再びタッチラインを割ったボールを、トラヤさんが拾ってコーナーにセットする。

「さっきはクロス、失敗してもうたが、今度はセットプレイや。ヘタなボールは、蹴れん!」
 トラヤさんのコーナーキックは、弧を描きペナルティエリアに落ちて来た。

「野洲田(やすだ)、頼んだぞ!」
「任せな、龍丸!」
 長身センターバックの野洲田さんが、ヘディングで触ってボールをはじき返す。

「へへッ、もう1回(ワンモア)だ!」
 相変わらずの読みで、ルーズボールに素早く反応するネロさん。
ボールを拾って、スッラさんに入れた。

 ……ここだ。
ボクもそのプレイを読み、パスをカットする。

「し、しまった!」
 慌てる、ネロさん。

 顔を上げる、ボク。
MIEのバックラインを見ると、カイザさんが自身を含めた4枚のバックラインを、見事に横1列に統率していた。

 さ、流石だな、カイザさん。
攻撃の時も、守備の管理を怠(おこた)っていない。

「展開は、させん!」
「オラ、ボールをよこせ!」
 前方からスッラさんが、背後からはネロさんが、ボクからボールを奪おうとプレスをかけて来た。

 ここは、前に出るしかない。
ボクは、ボールを持ち上がる(ビルドアップ)選択をした。

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この世界から先生は要らなくなりました。   第10章・第47話

切断王女(ギロチン・プリンセス)

 ステージには既に、ミニスターⅣ(フォース)コアの4人の少女が立っている。

「オイオイ、今度はアニソンかよ」
「あのコたち、女の子向けヒロインアニメで、声優やってる人じゃない?」
「ああ、聞いたことあるぞ。夏に始まった、ユークリッド・アニメチャンネルで人気のヤツだろ」

 コミカルでポップな勢いのある曲を、カッコいいとカワイイが合わさったポーズを決めながら歌う、4人の少女たち。

「わたしは、クリッター・ピンク。サルガタナスを司る、相良 龍美奈(さがら ルミナ)だよ!」
 曲が終わると、4人の真ん中に立っていた少女が、会場に向かって名乗りを上げる。

 冥府のアイドル(ベルセ・ポリナー)だけあって基本色は黒いものの、低年齢層の女の子向けアニメのヒロインみたいに、ピンク色のフリルが付いた可愛らしい衣装を着た、ルミナ。

「我ら、『クリティカル・テック・ストライカー』ことクリッターは、世界の正義を守るために、今日も悪と戦う!」

 金髪の長髪からピンク色のツインテールが長く伸び、背中からは黒の骨格にピンク色の被膜(ひまく)の、龍の翼が生えていた。

「アレ。チーム名は、全然可愛くないですね?」
「まあ……ね」
 ボクの質問に、歯切れが悪そうに答える久慈樹社長。

 すると舞台に、全身が黒いタイツの戦闘員たちが、ワラワラと登場する。

「出たわね、ダーク・フォレスター。アナタたちの悪事は、レラジエを司るクリッター・グリーンこと、大鳳 蒔世琉(おおとり ジゼル)が許さない!」

 黒髪のポニーテールを長く垂らした少女が、長い名乗りを上げた。
ジゼルは、黒に深緑色のフリルの衣装を着ていて、背中には黒い鳥の翼を生やしている。
フリルスカートの後ろからは、深緑色のクジャクの羽が垂れていた。

「みんな、安心して。アイツらはヴァレフールを司るボク、クリッターイエローこと、麟堂 駆路琉(りんどう クロル)が、やっつけちゃうんだからね」

 栗色のショートヘアから、鹿のような角を生やした、ボクっ子のクロル。
黄色のフリルが何重にも重なった黒いスカートを穿(は)き、大きなフサフサの金色の毛が肘(ひじ)や膝(ひざ)に生えていた。

「フォラスを司る、玄岩 穂田琉(くろいわ ホタル)こと、クリッター・ブルーです。が、頑張ります」

 黒に青色のフリルが折り重なったスカートの、ホタル。
黒い甲羅を背中に装備し、全体的に重武装な衣装だった。

『ギェ、ギェ、ギェ、ギェ。出たな、クリッターどもめ』
『今日こそ、お前たちを亡きモノとしてくれる!』
 遊園地などで催される、ヒロインショーのようなステージが、繰り広げられる。

「行くよ、ジゼル、クロル、ホタル。ダーク・フォレスターの好きには、させないんだから!」
 クリッター・ピンクのルミナが、両方の腰に下げた刀を抜いた。

『ギャギャァアァーーーーッ!?』
 真っ二つに両断され、左右に別れて崩れ落ちる、ダーク・フォレスター戦闘員。

「ゲゲ、真っ二つになって死んだぞ!?」
「あの戦闘員、中に人は入ってないのか」
「そんなコトより、演出グロくない?」

 その後も臆するコト無く、敵を斬り捨てて行くルミナ。

「お前、知らないのかよ」
「クリティカル・テック・ストライカーは、見た目に反してやるコトえげつないからな」
「クリッター・ピンクは、切断王女(ギロチン・プリンセス)なんて呼ばれてるし」

「わたしも、容赦はしないわ!」
 クリッター・グリーンのジゼルが、背中に背負っていた弓を取り出して、戦闘員に目掛けて放つ。

『ボギャッ!!』
 複数の矢が戦闘員の頭部に命中し、胴体からもげてステージの床に転がった。

「ボクも、行ッくよォ!」
 クリッター・イエローのクロルが、口から火炎弾を放つ。
焼け焦げ、燃え落ちる戦闘員たち。

「わ、わたしも、混ぜてください」
 クリッター・ブルーのホタルが背負った甲羅の下部から、巨大なヘビが現れ戦闘員を締め上げる。
バラバラにされ、床にまき散らされる戦闘員だったモノ。

 ヒロインのショーに思われたステージは、地獄絵図と化していた。

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一千年間引き篭もり男・第08章・54話

トラロックの最期

 途切れ途切れの音声が、6人の少女たちの首に巻かれたコミュニケーションリングから、脊髄(せきずい)の神経節を通じて脳へと伝わる。
それは明らかに、地球の衛星軌道上を周回するテル・セー・ウス号からの通信だった。

「どうしたんだい、アンティオペー艦長!」
「通信が断片的で、はっきり聞えないよ」
「ウーのヤツがまた、攻撃して来たのか?」

 テル・セー・ウス号との通信を担当していた、マレナ、マイテ、マノラの3姉妹。
けれども通信は、完全に途絶してしまった。

「宇宙でも、なにかあったのかな?」
「人の心配してる場合じゃ、ないよ!」
「前衛が来てくれたとは言え、たった2機なんだ」

 マレナ、マイテ、マノラの3姉妹は、立て直したばかりの防衛ラインを護るのに、必至だった。

 ~その頃~

 ドス・サントスはまだ、執務室の豪奢(ごうしゃ)なビロードの椅子に座っていた。

「宇宙からの信号が、途切れただと。どう言うコトだ?」
 指令室の機能を有している執務室で、野太い声で部下たちに問いかける。

「わ、わかりません。ウーは依然として、沈黙したままなのですが……」
 マレナたち3姉妹から、オペレーターの任務を引き継いだ男が答えた。

「だったら通信が途切れる前、宇宙船の女艦長が言おうとしていた内容は、解析できるか?」

「はい。欠けている部分を補正し、流します」
 男が機器を操作すると、ドス・サントスの対面する壁のスクリーンに、アンティオペー艦長の顔が映し出される。

『緊急の情報です。こちらは、ペル・セー・ウス号。現在、地球の衛星軌道上に出現し……謎の敵影と交戦中です』
 コンピューター補正された、クリムゾンレッドのソバージュヘアをした少女が、必至に訴えかけた。

『敵は恐らくサブスタン……で、わたしの艦は多大な損害を被り、退避せざ……得ません』
 完全ではない補正のため、映像も音声も所々にノイズが入っている。

「どう言うコトだ。アンティオペー艦長の艦は、木星の企業国家の創った、最新鋭の戦艦じゃねェか?」
 答えるコトの出来ない過去のアンティオペー艦長の映像に、怒鳴り散らすドス・サントス。

『敵サブスタンサーは、わたしの艦を追尾する……無く、地球に降下して……ました。カメラが捉えた映像を、そち……送ります』
 その台詞を最後に、停止してしまうアンティオペー艦長の顔。

「映像、以上になります」
「アンティオペー艦長が言っていた映像ってのは、送られて来ているのか?」
「はい。スクリーンに、出します」

 オペレーターの男が機器を操作すると、スクリーンの映像が可愛らしい少女から、地球を背景にした広大な宇宙へと切り替わった。

「こ、これは……」
 驚愕の顔で映像を見つめる、トラロック・ヌアルピリの代表。

 映像には、地球に落ちていく非常に小さな点が、映っている。
カメラが拡大されると、ノイズの乗った人型の影が浮かび上がった。

「ど、どう言うコトだ。コイツは、ケツァルコアトル・ゼーレシ……」
「代表! セノーテの上空に、広範囲の高熱源反応!」
 代表の言葉を遮る、オペレーター。

「な、なんだと!?」
「セノーテの地上カメラの映像、出します!」
 オペレーターが、再びスクリーンの映像を切り替える。

 スクリーンには、放射能にまみれた黒い雨を降らせる、分厚い雨雲を突き抜け地上に降り注ぐ、流星群が映し出されていた。

「バ、バカなコトが。あの小僧が、裏切ったって言うのか!?」
 手の込んだ彫刻が掘られた飴色の机に手を突き、立ち上がるドス・サントス代表。

「流星の1つが、このセノーテを直撃します。代表、急ぎ退避を……」
 オペレーターの男の喚起(かんき)の声が、激しい振動と低い轟音で掻き消される。

「な、なにが……起きてやがるッ!?」
 トラロック・ヌアルピリの代表が天井を見上げると、グラグラと揺れていたシーリングファンが外れ、果物カゴの置かれたテーブルの上に落ちた。

「オレは、こんなところで……」
 ドス・サントスの執務室が、真っ白な光に包まれる。

 ユカタン半島に起きた製薬会社に端を発する企業国家、トラロック・ヌアルピリの代表にして国家元首は、こうして地球上から姿を消した。

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ある意味勇者の魔王征伐~第13章・62話

天才建築家

「こんな身なりでは、説得力が無いのも当然か」
 ティ・ゼーウスのハートブレイカーによって、治療された男は何とか自力で立ち上がる。

「だがわたしは、10年の年月を費(つい)やし、たった1人でこの迷宮を完成させたのだ」
 ダエィ・ダルスは髪も髭も伸び放題で、皮膚も垢で汚れていた。

「これだけ広大で複雑極まりない迷宮を、たった1人で創っただって。一体誰が、信じるってんだい?」
 首を傾(かし)げる、サタナトス。

「わたしはこれでも、天才建築家と呼ばれた男なのだ。わたしの建築家としての設計技術と、我が剣『ダイア・レイオン』さえ在ればこそ、成せる業(わざ)だ」
 永きに渡る地下牢生活で、何年も身体を洗ってないだろう男は、自信あり気に言った。

「なるホド、剣の能力か。それなら少しは、納得したよ」
 人を魔王や魔物に変える剣の主(あるじ)は、偉大なる天才建築家の言葉に頷(うなず)く。

「で……そのダイア・レイオンと呼ばれる剣は、今持っているのか?」
 ティ・ゼーウスが、問いかけた。

「剣が手元にあったなら、こんな姿で何十年も牢獄に繋がれては居ないさ」
 遠回しな物言いをする、ダエィ・ダルス。

「だったら剣は、今どこに……」
「ミノ・リス王の元にあるに、決まっているだろう。少しは、頭をはたらかせろよ」
 ティ・ゼーウスの言葉を遮(さえぎ)る、サタナトス。

「察しが良いな、金髪の少年」
「ボクは、サタナトス。命の恩人の名前くらいは、覚えてくれないかな?」

「確かに1理あるな、サタナトス。これからは、名前で呼ばせて貰おう」
 素直に応じる、天才建築家。

「ミノ・リス王はわたしに、自らを護るための迷宮の作成を依頼した。高額の報酬や地位を約束されたわたしは、王の求めに応じたのだ」

「だが約束は、守られなかったのだな?」
 ティ・ゼーウスが、話の先を読む。

「ああ。王は約束の報酬を渡さないどころか、わたしの妻を殺し、我が剣と息子まで奪った」
「そんでアンタ自身も、牢に繋がれちまったのか。お気の毒に」

「ダエィ・ダルス。キミがこの迷宮を作ったので在れば、当然ミノ・リス王の王宮の間へと続く道筋(ルート)も、知っているんだろ?」

「モチロンだ。だが王の間へと続く回廊の先には、ミノ・ダウルス将軍が待ち構えている。残念だが、王の元へは辿り着けないだろう」

 話を聞いた、サタナトスとティ・ゼーウスは、互いに顔を見合わせた。

「そこは、問題ないんじゃないかな。ミノ・ダウルス将軍の部下の1人である女将軍を、始末して来たばかりだし」

「雷光の3将か。牢に繋がれていたから、今の雷光の3将の実力は知らんが、わたしが王の元で建築家として迷宮を創っていた頃の雷光の3将ですら、ミノ・ダウルス将軍の前では手も足も出せなかったのだ」

「どんなに強くても、ボクの剣の前じゃ関係ないと思うよ」
 サタナトスは、ダエィ・ダルスの前に魔晶剣プート・サタナティスを実体化させる。

「なるホド、古代の兵器(ロスト・アーティファクト)か。だが、ミノ・ダウルス将軍には通じないな」
「どうして、そう言い切れる?」

「ミノ・ダウルス将軍も、わたしやそこの少年と同じなのだ」
「言っている意味が、理解でき……な……」
 サタナトスは、自分の発した言葉に疑問を抱(いだ)いた。

「そう言えば、ティ・ゼーウス。お前には、ボクの剣の能力が効かなかったな」
 アッシュブロンドの長髪の少年に、ヘイゼルの瞳を向けるサタナトス。
けれどもティ・ゼーウスは、なにも答えない。

「ダエィ・ダルスにしても、長年に渡って地下牢に繋がれ、内臓を虫やネズミに食い荒らされながらも、今まで生き永らえている」
 手を下あごにやって、考察する金髪の少年。

「まさかお前たちも、アズリーサと同じ……」
 サタナトスは、最愛の妹の名を口にした。

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