ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー~登場人物紹介・012

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亜紗梨 義遠(あさり よしとお)

ポジション :DF
身長    :187cm
体重    :74kg
利き脚   :左右両脚
背番号   :3
愛称    :アサリ・アサリン
出身地   :静岡県
好きな食べ物:ザッハトルテ、いちごタルト
嫌いな食べ物:イカの塩辛、生ガキ

プロフィール

 部活を辞めた紅華と同じく、海馬コーチの元で技術を磨いていたディフェンダー。
紅華が居た頃は内気で大人しく、器用貧乏なイメージが強かった。

 海馬コーチと共にデッドエンド・ボーイズに加わると、コーチ直々の推薦が監督に受け入れられて、レギュラーのセンターバックに抜擢される。
テクニックメインのディフェンダーで、キーパー以外のあらゆるポジションをこなせるユーティリティ・プレーヤー。

 サイドのポジションからゲームメイクする能力を持ち、長短のパスでチャンスを演出する。
半面、コンタクトプレイにはまだまだ課題が残り、軽い当たりで相手の突破を許す場面も見受けられる。

 小さい頃から女性に間違われるコトも多く、自分に自信が持てないでいたが、あるきっかけが元で才能が開花した。
内気な者同士、一馬とは互いに通じるモノがあり気が合う。
紅華や野洲田など、チームメイトに問題児が多いため、問題が起きると調停役をしていた。

 裁縫や手芸が趣味で、アニメキャラなどをぬいぐるみにして女友達にプレゼントしたりもする。
料理が得意で、洗濯をしていると幸せを感じるなど、とにかく女子力が高い。

 

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一千年間引き篭もり男・第06章・06話

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混迷する会議

 地球人によって、かつてあったとされる豊かな大気を復活させた火星。
真っ赤な惑星も、テラ・フォーミングが進むに連れて、蒼さと緑色の割合が増していた。

「交渉とはまず、互いを知るコトから始めなければなりません。彼らの詳細な情報を、まずはメリクリウスに提示して貰いましょう」
 アポロは立ち上がり、円卓を囲む12の席の1人に眼をやる」

「ヤレヤレ、アポロ。ボクが情報を集めているのも、既にお見通しと言うワケかい?」
 宇宙通商交易機構の代表である金髪の好青年は、肩を竦めた。

「お互い利権やら、政治的思惑があるコトは理解する。だが、コトは急を要するのだ」
「ハイハイ、解りましたよ。まずはこれをご覧なさいな」
 メリクリウスが視線を向けると、円卓の真上に巨大な球体のフォログラムが映し出される。

「これが、彼らの艦隊ですか」
「ええ、ミネルヴァ。先ほどユピテル自身が言っていた通り、殆どが木星のグランジュポイントにある2つの企業国家から、鹵獲したモノです」

「艦隊の規模は、どの程度なのです?」
 地球圏代表の女性が、再び問いかける。

「4個艦隊が存在し、1個艦隊が大型宇宙空母5隻、中型空母12隻、小型空母兼強襲揚陸艦42隻、宇宙戦艦1隻、巡洋艦5隻、駆逐艦10隻、小型艦やミサイル艇などを入れますと、1000隻規模の艦隊になってますね」

「かなり、空母寄りの編成じゃねえか。ま、ウチの艦隊にかかれば、一瞬で宇宙の塵になっちまうがよ」
 真っ赤な髪に、燃えるようなオレンジ色の瞳、褐色の肌をした男が言った。

「事は、そう簡単な問題では無いのだ、マーズ(火星圏代表・マルステクター社・会長)」
「どい言うこった、アポロ。我がマルステクター社の艦隊が、木星圏如きの艦隊に遅れを取るとでも言いてェのか?」

「その通りだ」
「何だと!?」
「今のまま戦火を交えればマーズ、お前が敗北するコトは必至となる」

「まあまあ、アポロ。マーズも情報は最後まで聞かなきゃ、意味を成さないよ」
「ケッ、わかったよ。さっさと続きを喋りやがれ」
「火星の艦隊が敗北する理由とは、何なのです?」

 一同の質問が、メリクリウスに集中する。

「敗北の理由は、たった1隻の艦なんですよ」
 金髪の好青年が手をフォログラムに掲げると、中の映像が艦隊中央の1隻の艦を捉える。

「この艦は……かなり巨大ですね」
「全長は2200メートル、全幅890メートル、艦底から艦橋最上部までの高さが430メートルもあります。偵察機の映像では、中に巨大な街も確認されてるんですよ」

「巨大であれば、良いってワケじゃ無ェだろ。ヒットボックスが、デカくなるだけだぜ」
 腕を組んで、ふん反り返るマーズ。

「残念ながら、この艦自体が戦闘をする映像は手に入れられませんでしたが、艦載機のレベルだけ見ても相当な制圧力を持っていますよ」
 フォログラムの球体の映像が、再び切り替わる。

「この映像は、トロヤ群での戦闘の様子を、民間人や無人カメラが撮影したモノなんですがね」
「なんだ、これは。ずいぶんと、変わったタイプのサブスタンサーだな?」
 マーズのオレンジ色の瞳に、白に金色の装飾が施されたサブスタンサーが映る。

「件(くだん)の、アーキテクターの反乱時のモノですね」
「相手は、反乱の首謀者であるアーキテクターの機体なんですがね。どちらの機体も、我々が保有している量産機を、大きく上回る性能を示しているんです」

「指揮官用のスペシャル機の性能が高いからって、その他の機体まで高性能とは言えんだろうが?」
「残念ながら、マーズ。彼らが2つの反乱で失ったサブスタンサーの数は、ゼロです」
「なにィ!?」

「どうやら、侮ってはいけない交渉相手の様ですね」
「その通りです、ミネルヴァ。軽々しく戦火を交えては、なりません」
 アポロが、うやうやしく言った。

「ずいぶんと弱気じゃねえか、アポロ。例え戦力的に充実した相手だろうと、火星の6個艦隊に火星圏の6個艦隊を合わせた12艦隊を持ってすれば……」

「彼らは、グリーク・インフレイム社とトロイア・クラッシック社の艦隊を、乗っ取ったのだよ」
「貴方の艦隊が、乗っ取られる可能性も考えなくてはならないのです」

「うッ、それは……」
 マーズは言葉を失う。

「彼らの艦の性能に加え、艦隊を鹵獲した情報戦能力。明らかに、オーバーテクノロジーなのです」
「何が言いたいのです、アポロ」

「彼らとこの件の裏には、『時の魔女』が絡んでいる可能性があるのです」
 古の太陽神の名を持つ青年の言葉に、円卓を囲んだ全員の表情が凍り付く。

「……まずは、彼らと交渉をしてみましょう」
 地球圏代表の女性が、立ち上がった。

「アポロ。メリクリウスと共に、彼らとコンタクトを取りなさい。方法は、任せます」
「ハッ」
「これは、厄介なコトになったねえ」

 2人の神は、アテーナー・パルテノス・タワーを後にした。

 

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キング・オブ・サッカー・第五章・EP018

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海外からのオファー

「一馬に気合入れるのはいいっスけど、倉崎さん。試合は、アップ(ウォーミングアップ)とか終わってからじゃ無いんスか?」
 紅華さんが指摘した。

「オレはこれから、名古屋リヴァイアサンズの練習に合流せねばならん。悪いがもう、行かないと間に合わないんだ」
 そ、そうなんだ……。

「なんだよ、せっかくオレさまのスピード、見せたかったのに」
「ワイの初陣かて見て貰いたかったんやが、まあしゃ~ないわな」
 ボクだって、黒浪さんや金刺さんと同じ気持ちだ。

「倉崎、向こうのチームの監督に、挨拶くらいしてくね」
「そうですね。それじゃお前ら、頑張れよ」
 倉崎さんは、立てた2本指で敬礼した後、セルディオス監督と出て行った。

 2人は、オーバーレイ狩里矢のチーム関係者に挨拶をした後、ボクたちがアップを始めた練習場の隣道を歩く。

「すみません、セルディオスさん。監督を引き受けていただいて、感謝してます」
「なあに、ヒマなメタボ親父の道楽ね。それに彼ら、中々見どころあるね」

「ええ、一馬以外の中核メンバーは、ウチの弟がリストアップしてくれた人材ですからね」
「でも、その御剣に10番預けたのはナゼね?」

「アイツは、オレが始めて自分の眼で見てスカウトした人材なんです」
「弟さん、許してくれそうね?」
「アイツのチームの中心は、オレでしたからね」

「確かに良くないね。倉崎1人で、チームの財政が傾きそうな人選よ」
「もしかしたらアイツらの中にも、そんな人材が眠っているかも知れませんよ」

「甘いね。10代の時点でスター扱いもされて無い人材、何年か後には全員別の職業に就いてるコトだってあるよ」
「相変わらず、厳しいですね、セルディオス監督」

「10代のスターがプロで挫折して行く姿、いっぱい見て来たからね。海馬だってそうよ。高校時代にアイドル扱いされていい気になって、今じゃあの体たらくよ」
「オレも、気を付けないとですね」

「今日の試合、相手は地域リーグでの最高峰リーグまで昇ったコトもある強豪ね。勝てる見込みはマズないよ」
「はい。オレも彼らを、3年のスパンでプロ意識を植え付け、育てようと思っています」

「3年後……高校を卒業する頃までに彼らが、何人残っているか賭けてみない?」
「プロとしてスカウトされて、チームを離れる以外の理由でしたら乗りますよ」

「彼らがスカウトされてチーム離れるより、倉崎が日本離れる方が先だと思うね」
「え……?」
「今、何チームからオファー来てるね?」

「さ、流石ですね」
「サッカーの伝道師(エヴァンゲリズモ)の眼は、伊達じゃないよ」

「オランダの1部リーグから3チーム。スペイン2部から2チーム。イタリア2部から2チーム。あと、ドイツの1部からも昨日……」
「どっちが流石よ。呆れたオファーの数ね」

「でも、流石に迷ってます」
「何で迷う必要あるね。さっさと行くよ」

「オレがプロで活躍し始めたのは、たった2ヵ月前ですよ。実績が……」
「プロのスカウトの眼、舐めない方がいいね。1件や2件ならまだしも、それだけ大勢のスカウトが倉崎、アナタを評価してるんだよ」

「で、ですが……」
「彼らのコトが、心配ね?」
「そ、それは……」

「チームのコトは、ワタシに任せるよ。雪峰も居るし、柴芭も優秀そうよ」
「セルディオスさん……」

「彼らに、世界の舞台で活躍する背番号14番の姿、見せつけてやるね」
 メタボリックな監督は、天才プレーヤーの背中を押した。

 その頃~。
アップを終えたボクたちは、練習場でボール回しを始める。

「なあ、ピンク頭。倉崎さんがウチのメタボ監督と話してるケド、なに話てんだろうな?」
「さあな。それより直ぐに試合だ。集中しろ、クロ」
 黒浪さんと紅華さんとの間で、ダイレクトパスのボールが行き交う。

「そうですね。今は目の前の対戦相手に、集中しましょう」
「どうやらお相手さんも、アップ始めたみたいやしな」
 コンビを組んだ柴芭さんと金刺さん目が、狩里矢の選手たちの様子を捉えた。

「今日の試合、胸を借りるなどと考えていては、対戦してくれる相手に失礼だ」
「そうでありますな、雪嶺士官。全力で行きましょう」
 雪峰さんと杜都さんも、気合を入れる。

 龍丸さんは、野洲田さんと一緒にパスを回してるし、キーパーの海馬さんは受け身の練習をしている。
他のメンバーも、それぞれ相手を見つけてパス練習をしていた。

……よ~するに、ボクだけ練習相手がいない!
人数が奇数だと、ボクが1人になる可能性ってメチャクチャ高いんだよね。

「やあ、キミも練習相手がいないのかい?」
 振り返ると、背は高いけど気の弱そうな人が立っていた。
どことなく、女性っぽくも見える。

「オレは、亜紗梨 義遠。よかったら、一緒に練習しない?」
 ボクは有難い助け舟に、首を大きく縦に振った。

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ある意味勇者の魔王征伐~第10章・10話

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オアシスの激戦~1

「結局、情報らしい情報って言えば、オアシスのトカゲ女の話だけだったわね」
 砂漠棲の馬に乗ったカーデリアが、砂漠用のフード付きマントで汗を拭う。

「わたしが来たコトで、返って警戒されてしまったのでしょうか?」
 3人のオオカミ娘を乗せた、イヴァン騎士団長が後ろを振り返った。

「ま、可能性はあるわな。都会の街と違って、田舎は住民が結束して秘密を隠したりするからな」
「ちょっと、シャロ。それって、田舎に対する偏見じゃない?」

「現実を観ろよ。都会じゃ結束して情報を隠ぺいするなんて、不可能だろ」
「良くも悪くもと、言ったところじゃな」
 大人の意見を言う、小さな馬を駆る赤毛の少女と、その後ろに乗った漆黒の髪の少女。

「まあ、そうかもだけど」
「それよりカーデリア。アレが例の、礫の砂漠らしいぜ」
 砂漠を行く一団の前に、小さな石ころが無数に散らばる固い大地が広がっていた。

「情報によれば、この向こうがオアシスらしいのじゃ」
「礫の砂漠なんかに、用は無え。一気に突っ切るぜ」
 シャロリュークの掛け声と共に、3頭の馬が礫の砂漠を駆け抜ける。

 そこはかつて、サタナトスやアズリーサを始めとした孤児たちがビバークした場所であるが、彼らにはそれを知る由も無かった。

「クンクン……」「ねえ、父上」「なにか、居るよ」
 オアシスが見えると同時に、イヴァンの前に跨ったオオカミ娘たちが騒ぎ始める。

「件(くだん)の、トカゲ女でしょうか?」
「かもな。冒険者のおっちゃんの話じゃ、1匹じゃなく集団みて~だから油断すんなよ」
「一端馬を降りて、近づいた方が良いかも知れぬのじゃ」

「もうバレてるかも、知れねえケドな。カーデリア……」
「解かってるわよ。シャロ」
 赤毛の少女が振り返ると、幼馴染みが4本の弦を持つ弓を構えていた。

「カーリー、上じゃ!!」
 ルーシェリアが、いきなり大声で叫ぶ。

「え!?」
 愛称を呼ばれたカーデリアが上を見上げると、そこには1人の男が宙に浮かんでいた。

「みんな、避けろ!?」
 赤毛の少女の指示よりも早く、男の剣が振り降ろされる。

「刻影剣・バクウ・プラナティス!!!」
 砂漠の蒼い空に、突如として黒く大きな球体が出現し、それが一行の上へと堕とされた。

「きゃああ!?」
「マ、マズいのじゃ。空間が、消し飛ばされておる!」
「さ、避けきれない。パトラ、パニラ、パメラ!」

「しゃ~ねェ、『エクスマ・ベルゼ』!!!」
 赤毛の少女の瞳が輝き、身体が紅蓮の炎に包まれる。

「うおおおおぉぉおーーーーーーりゃ!!」
 黒い球体が中央から、吹き上がった炎に両断された。

「炎の斬撃だと……赤毛の英雄か?」
 宙に浮かんだ男は、眉一つ動かさずに呟く。
長い黒髪は爆風で舞い乱れ、その背中には6枚の翼があった。

「どうやら、魔族の様じゃな。しかも、魔王クラスじゃ!」
 男から溢れ出るとてつも無い魔力を、ひしひしと感じるルーシェリア。

「フッ、その通り。オレは、魔王『ケイオス・ブラッド』だ」
 男は、一行の前の砂丘に降り立つ。
2つに割れた黒い球体は砂漠の地面に落ち、2つの巨大な穴を穿っていた。

「こ、これは……穴に砂が吸い込まれて、アリ地獄の用になっておりますぞ!?」
 3人の娘を抱えたイヴァンが、穴から遠ざかりながら言った。

「どうやら、空間を削り取っているみたいね。とんでも無い能力の、魔王だわ」
 カーデリアは最大限の警戒を払いながら、4弦の弓を構える。

「違うぜ、カーデリア……」
 炎を身に纏った、赤毛の英雄が言った。
その身体は既に少女のモノでは無く、本来の英雄の姿に戻っている。

「な、なにが違うのよ、シャロ!?」
「コイツは、魔王なんかじゃねえ」
「え、どう見たって魔王だし、自分で名乗ってるじゃない」

「ふむ、ケイオス・ブラッドかえ。確かに、聞かぬ名じゃ」
「で、でも……」

「それに、ヤツの剣を見ろよ。アレは、バクウ・プラナティスだ」
「バクウ・プラナティスって、蜃気楼の剣じゃない!?」
「蜃気楼の剣は現在、サタナトスの手に墜ちているのでは?」

「ああ、そう言うこった」
 赤毛の英雄シャロリューク・シュタインベルグは、エクスマ・ベルゼを白く輝かせた。

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この世界から先生は要らなくなりました。   第05章・第29話

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パソコンとスマホ

「お前にも解かるように言えばユミア、お前のパソコンでお金が増やせるんだ」
 少女のつぶらな瞳に映った、優しい兄が言った。

「お兄様にならイイけど、他の人には……」
「オレじゃ、トレードやマイニングの知識は無いからな。久慈樹に触ってもらうしか無いんだ」
「し、仕方ないな。少しだけだよ」

「そうか、アリガトな、ユミア!」
「ひゃああああ!?」
 倉崎 世叛は、妹を両腕で抱き上げる。

「お、お兄様、パンツ見えちゃう」
 頬を赤らめ、必至にスカートを押えるユミア。

「小学生の子供パンツになんか、興味無いよ」
 どこ吹く風の久慈樹が、キーボードをカチャカチャ鳴らしながら言った。

「お兄様、なんかコイツ、ヤなやつだよ」
「まあまあ。そう怒るなよ、ユミア」
 お怒りの妹をなだめる、兄。

「それより見てくれ、倉崎。この部屋のパソコンはどれも、かなりのモノだぞ」
「そうなのか?」

「天才プログラマーなのに、ホント気にしないんだな。弘法筆を選ばず……ってヤツか」
 久慈樹は、肩を竦める。

「それより株のトレードや、マイニングは出来そうか?」
「問題ないよ。こっちのパソコンなんか、サーバー用のCPUが乗っかってるしね。技術もさるコトながら、よくこれだけ高価なモノを組めたね」

「叔父さんが、デジタル家電やガジェットには目が無い人でな。他の家族からの理解が全く得られて無いらしく、ユミアには甘い様だ」
「娘2人と、奥さんから白い目で見られてるのか。なる程ねえ」

「だが、これで資金を増やせるな。このパソコン、何台か貸してくれないか?」
「い、いいケド、何台欲しい?」

「そうだな……」
 倉崎の視線が、久慈樹に向けられる。

「株のトレード用には、ゲーミング性能が高いこのパソコンでいいだろう」
「トレードに、ゲーミング性能なんて関係あるのか?」
「ディスプレイポートが多くあって、オンボードより描画も安定するからね」

「つまり、モニターを大量に接続するんだな」
「ああ、株のトレーダーがよくやってる、アレさ」

「だが、モニターが無いぞ」
「モニターなんて、ネットで探せば1万もせずにあるよ。ゲームをするワケじゃ無いから、描画性能なんて気にする必要も無いからね」

「ネットマネーの、マイニングの方はどうする?」
「倉崎、キミが借りたマンションの、電力事情次第さ」
「電力事情?」

「ああ。マイニング用のマシンを、常時稼働させて置く必要があるからね。電気代もかかるし、バランスを考えないとだな」

「常時稼働となると、2台が限界か?」
「そんなとことだろうね。夏は冷房代もバカにならないから、導入は秋以降の方がいいかも知れない」

「他に、必要そうなモノはあるか?」
「大いにあるね。スマホだよ」
「スマホなら、オレも持っているが?」

「この部屋に散乱しているのは、どれもキミのより高性能なスマホだよ。特に、カメラ性能が高い。キミの動画のクオリティも、上がるんじゃないかな」

「スマホを、動画の撮影用にするのか?」
「キミの使っている10年前のカメラより、よほど優秀さ。持ち運べるしね」

「なあ、ユミア。早速で悪いんだが、パソコンを3台とスマホ……を?」
 倉崎は、お姫様抱っこをしたままの妹に、目をやる。

「フッ、どうやら寝てしまったみたいだね。可愛いパンツが、丸見えだ」
 クスリと笑う、サラサラヘアの高校生。

「久慈樹……」
「何だい?」
「妹は、渡さんからな!」

「ヘ……イヤイヤイヤイヤ」
 その日、倉崎は妹をベットで寝かし付けると、久慈樹と協力してパソコン3台とスマホ2台を、自分のマンションへと運んだ。

 替わりに妹の枕元には、クマの大きなぬいぐるみが置かれる。
けれども、目を覚ました瀬堂 癒魅亜が、それを気にるコトは無かった。

「なる程な。ユークリッドの2人の天才高校生も、最初はそんな感じだったのか」
 巨大企業に変貌した、ユークリッド本社の地下駐車場。
ユミアの昔の話を聞き終えたボクは、改めて2人の凄さに感心する。

「ええ、そうよ。アイツの第一印象は、イヤなヤツだったわ」
 高校生となった瀬堂 癒魅亜は、恨めしそうに言った。

 

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一千年間引き篭もり男・第06章・05話

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火星の歴史

 MVSクロノ・カイロスの、内部の街にある学校。
ボクはそこで、教師の姿となった女性型フォログラムの説明(レクチャー)を受けていた。

『人類はまず、火星の衛星フォボスに、地球との距離が近い時期を見計らって人員や物資を輸送し、開発の拠点基地として整備しました』

「フォボス……か」
 ボクが1000年もの間、引き籠った挙句、最初に目覚めたのがフォボスの地下プラントだった。

「火星のテラ・フォーミングと、メインベルトの資源開発が目的だったんですよね?」
 普段は、艦長のボクをサポートしてくれるヴェルが、教師ってのもおかしなモノだ。

『その通りです。人類はフォボスの軌道を修正して、火星への激突を回避すると同時に、宇宙港、資源の採掘・加工プラント、小さな街を築きました』
 美人女教師が、豊満な胸の下で腕組みする。

「もしかしたら、ボクと黒乃の眠っていたカプセルは、火星入植の初期段階でフォボスに運ばれたのかも知れないな……」

『何か、言いましたか?』
「いえ、何でもないです」

「フォボスへの入植は、人類が宇宙時代の幕を開ける大きな一歩だったのですよ、宇宙斗くん」
 振り向くと、教室に1人の少女が入って来ようとしていた。

「委員長、どうしてここへ?」
 クーリアだった。

「クラスメイトの補習に、付き合おうと思いまして」
 彼女の本名は、クーヴァルヴァリア・カルデシア・デルカーダ。
この街での設定は委員長だが、本来は大財閥・カルデシア財団のご令嬢である。

「お邪魔でしたでしょうか?」
『いいでしょう。許可します』
 ヴェルの許しを得たクーリアは、ボクの隣の席に座る。

『火星への本格的な入植は、カルデシア財団などが出資しフォボスを起点として行われ、まず地下都市が建設されました。クーリアさん、理由は解りますか?』
「有害な宇宙線や、隕石などの脅威を避ける為でしょうか?」

『正解です。大気の組成を、地球に近づける作業が完了するまでの間、企業国家は地下に拠点を置いていたのです。かのマルステクター社でさえも、工場プラントはアマゾニス平原の地下にありました』

「過去形……ってコトは、人類は地上に拠点を移したんですね?」
『クーリアさん、換わりに答えていてだけますか』

「はい。火星の地表の面積は、地球の陸地の面積とほぼ同等であり、言い換えると人類が利用可能な土地は、地球と同じだけ用意されていたのです」
 1000年前のボクが通っていた学校を再現した教室で、クーリアは立ち上がる。

「多くの企業国家は、自分たちの領土である地下都市の上に、地上都市を築きました」
「そんなコトをして、強度的に大丈夫なのか、委員長?」

「火星の重力は、地球の40パーセントに過ぎません。重みで地下都市が潰れるコトも無ければ、高層建築も容易に建てられるんですよ」

「なるホド。重力が小さいってコトは、そんな利点もあるのか。地上に街ができたってコトは、大気の成分は地球と同じになっているんだな?」

「重力を操ることが可能になった現在の人類は、火星の表面からおおよそ1キロのラインまで、大気を固定するコトが可能です。大気は、地球の大気に近くなっている地域も増えましたが、元の火星の素性に近い場所もまだ存在しますね」

「ちなみにだケド、火星で一番高い建造物って何ですか?」
 現在の科学技術の水準を知る上でも、聞いて置きたかった。

『アテーナー・パルテノス・タワーで、標高25000メートルのオリュンポス山の山頂に建てられた、全高3000メートルの超高層タワーね』

「タワーには、ディー・コンセンテスと呼ばれる太陽系最大の意思決定機関が置かれ、周囲は大規模な居住区になってます。山頂は火星の大気の上に存在するため、軌道エレベーターとしての役割も、果たしていますね」

「今や地球は、太陽系の中心じゃないんだな……」

『オリュンポス山には、太陽系のあらゆる場所からやって来る、宇宙船やシャトルの発着するハブ宇宙港があるのよ。名前は……』

 エベレストの2倍以上の標高を持つオリュンポス山の頂上には、アクロポリス宇宙港があって、無数の宇宙船が慌ただしく発着を繰り返している。

「我々『ディー・コンセンテス』は、早急に意思を決定せねばなりません」
 それを見下ろすようにそびえるタワーの頂上で、会議は尚も進行していた。

「ですがミネルヴァ(地球圏の代表)、太陽系最高位の意思決定機関である我々に、間違いは許されないのです」
 クルクルと巻いたクセ毛に、芸術的な肉体を持った青年が異を唱える。

「アポロ(カルデシア財団・宇宙エネルギー機構代表)、貴方の意見を聞きましょう」
 ミネルヴァの許可を得て、アポロは立ち上がった。

「此度の謎の艦隊との交渉、このアポロに一任いただきたい」
 ブロンズ像の様な肉体美の好青年は、皆の前で堂々と言い放つ。

 

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キング・オブ・サッカー・第五章・EP017

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神さまの背番号

「ええええええええーーッ!?」
 ボクは思わず、大きな声で叫んでいた。

「オオ。珍しく一馬が、喋ったぞ」
「いつもクールな御剣隊員にしては、珍しいな」
「カズマって、ほとんど表情変えないモンな」

 え……驚くとこ、そこ?
だって、ボクが10番なんだよ。
こんなボクがエースなんて、おかしいよね!

「それじゃあ、スタメン発表するね。ゴールキーパーは仕方ないから、海馬で行くよ」
「ういっス」
 うわ、何事も無かったかのように、進行されちゃった!

「フォーメーションは、3-6-0ね」
 ふえ!?

「なに言ってんだ、セルディオス監督!」
「そんなフォーメーション、聞いたコト無いぞ!?」
「それ以前に、1人足りないのですが?」

「まあ、落ち着くね。残念ながら、相手はかなりの格上ね。中盤を厚くしてボール取る、必要ね」
「ですが普通は、ディフェンスを厚くするべきなのでは?」
 ボクもそう思うよ、雪峰さん。

「タブン、それじゃ止められないね。だから出来る限り高い位置、ボール奪うね」
「でも、ゼロトップってのは、引き分け狙いなのか?」
「違うよ、紅華。トップの位置全てが、広大なスペースね」

「アン、一体どう言うこった。解るか、龍丸?」
「ウム。どうやら誰かの、陰謀である可能性が高いな」
 野洲田さんの言葉を受けた、龍丸さんが真顔で言い放った。

「まず注目すべきは、ゼロという数字。この数字にどんな意味が含まれているか、探らねばなるまい」
「オイオイ、また始まったぜ。龍丸の、なんでも陰謀論」
 なんでも陰謀論って、なに!?

「ゼロとは、古代インドにて発見された数字と思っている人間も多いが、発祥はあのメソポタミアなのだ。メソポタミアと言えば、アヌとキが生み出したアヌンナキ。つまり……」

「な、なあ。この人、いきなりなに言い始めたんだ!?」
「気にすんな、クロ。付き合っても無駄だから、先進めてくれ」
 紅華さんが、監督に目配せをする。

「そ、そうするよ。例えばブラジルが、ワールドカップで使ってたシステム、4-4-3ね」
「今度は1人、多い気がしますが?」
「マジックじゃねえんだからよ、柴芭。明らかに多いぜ」

「種明かしすると、3人のフォワードのポジションの内、右か左のどちらかに人を置かないね」
「それってただの、ツートップじゃんか?」
「イヤ、黒浪。ツートップは普通、中央に等間隔で並ぶ」

「簡単に言えば、センターフォワードと左フォワードか、センターフォワードと右フォワードのどちらかなのでしょうね」
「な、なるホド、随分と変った、フォーメーションだな」

「1970年は左を、1982年は右を開けてたね。1970年は、優勝してるよ」
「でも、どうやって勝てたんだ?」
「トスタンが開けたスペース、ペレがパス出して、ジャイルジーニョ決めたね」

「ペレって、あのペレか?」
「そう、サッカーの王さまペレね」
 ……1970年のワールドカップ、ペレはメキシコで神になったんだ。

「あえて開けっ放したスペース使こうて、ブラジルは優勝したんやな」
「つまりオレらドリブラーに、そのスペース使えってコトっスか?」
「そうね、紅華。フォワードの居ない、完全に開いたスペースね」

「にゃるホドォ、これは脚が鳴るぜ」
「オレさまの前に、広大なスペース……中々旨そうな、獲物じゃんか」
 2人とも、メッチャ嬉しそうだ。

「メンバー発表、続けるよ。センターバックは、龍丸、野洲田、亜紗梨」

「ウム、陰謀の主犯格が見えたのだな」
「イヤ、その話もういいから」
「アハハ……了解で~す」

「中盤は6枚、ここでボール取って行くよ。トリプルボランチに、雪峰と杜都と柴芭」

「はい」
「肯定であります!」
「承りましょう」

「右のミッドフィルダーに黒浪、右に黒浪、中央に金刺ね」

「オーケー」
「オレさまのスピード、見せてやるぜ」
「ワイの初陣や。気張ったるでェ」

 アレ、ボ、ボクは……?

「そう言や、1人足りないのはどうすんだよ」
「残ったのは、一馬だな」
「まさか、10人で戦う気やないやろな?」

「カズマは、特にポジションを制約しないね。自分の判断で、好きにプレーするよ」
 い、いいの?

「なんだ、そう言う意味かよ」
「ですがポジションを固定しないとは、思い切った判断ですね」
 紅華さんと、柴芭さんが言った。

「こればかりは、オーナーの判断よ」
「く、倉崎さんの?」
「確かに倉崎さんも、チームではポジションフリーに近いですが」

「一馬。お前は、ペレのポジションだ」
 ボクの背中には、神さまと同じ番号が入っている。

「チームを勝利に、導いて来い!」
 その言葉に、ボクは大きく頷いた。

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