ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

一千年間引き篭もり男・第04章・05話

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巨大アームの艦

『どう対処なされますか、艦長。前方の艦に進路を塞がれ、後方の艦隊からの離脱が難しくなりました』

 目の前に現れた漆黒の艦は、急速回頭して船首の四つのアーム部分をこちらに向ける。

「な、なんかおっきな、イカさんみたいなのですゥ!?」
 巨大な四本のアームを大きく広げ伸ばし、二千四百メートルもの巨体を誇るMVSクロノ・カイロスを補足しようとした。

「この艦だって、時の魔女のモノだろうに……一体、なにを考えてボクに艦を渡した!?」
 目の前で広がる巨大アームは、大航海時代の船に巻き付くクラーケン(巨大海洋生物)を思わせる。

「仕方ない……主砲はあるのか、ベル?」
『フォトンブラスター三連装主砲が、艦の中央に三門ございます』
「漆黒の艦の、アームの中央部に目掛けて発射、そのスキに離脱する」

『ミッションを承りました。これより実行いたします』
 ベルダンディはそう言うと、艦橋の下に広がる街の中央上部を横断する、支えのような構造物に備えつけられた主砲が動き出す。

「全部自動で行われるのか? 『人の手の入らない戦争』というのも、不気味なモノだな」
 ボクが感慨にふけっていると、MVSクロノ・カイロスご自慢であろう主砲が、火を噴いた。
真っ白な閃光が、漆黒の艦の中央部と結ばれる。

「アニメみたく光速のビームが、ゆっくり飛んでくワケじゃないんだよなあ……」
 二次元世界のロボットアニメで見慣れた光景とは、若干の差異はあったものの、結果的に巨大な漆黒の艦は大爆発を起こした。

「今だ、右舷から突破だ!」
『了解です、艦長』
 大爆発の中を潜り抜けて、巨大な艦体が進んでいく。

「やったぜ、じいさん。ナイスな采配じゃねえか!」
「ホント、艦長の椅子も伊達じゃない」
「お風呂を覗いたときは軽蔑したケドね」

 真央とヴァルナはボクを褒めたが、ハウメアにチクリと釘を刺された。
「ア、アレは忘れてないんだ?」
 今の彼女たちは、二つの記憶を持っている。

『彼女たちの記憶は、艦橋に上がる時点で返却してあります。この艦での偽りの記憶も、しっかりと覚えていますよ』
 ベルダンディは、眉一つ動かさずに言った。

「千年後の未来にあっては、人の記憶もここまで曖昧になってるんだな」
「オイ、艦長さんよォ。どうやらまだ、終わってねえみたいだぜ!?」
「……え?」「うわあッ!?」「きゃあああああーーーーッ!!?」

 プリズナーが指摘した瞬間、艦が急にストップされる。
「巨大な触手は、艦の後方にも存在したようですね」
 プリズナーの相棒のアーキテクター、トゥランが言った。

 爆発から現れた巨大なアームが、MVSクロノ・カイロスの後方に巻き付いている。
「マジでクラーケンみたいな艦だな!? ど、どうする!?」
すると爆発の中から、別のモノが飛び出してきた。

「ア、アレって戦闘機ですか!?」「今度は、艦載機での戦闘かよ!」
「この艦にも、艦載機はあったよな……」
 ボクは、六十人もの娘たちに視線を送る。

「へっへー!」「やっと、わたしたちの出番だね?」「まかせといて!」
「あんなヤツら、すぐにやっつけちゃうんだから!」
 無邪気にはしゃぐ、十歳の女の子たち。

「勇ましいこったな。ウィッチ・レイダーのガキどもは。トゥラン、お前も出れるか?」
「誰に言っているのかしら? 単体性能では、あのコたちに負けるハズは無いわ」
 どうやらコンバット・バトルテクターにも、プライドとか矜持があるらしい。

「お前らも、だいじょうぶか。お前らのアーキテクター、ずいぶん小っちゃいケド?」
「ウィッチレイダーを、ナメないでよ!」
「小っちゃいってコトは、当たりづらいってコトなんだから!」

「パパは艦橋で見てて!」「パパに、イイとこ見せちゃうよ!」
 娘たちとトゥランは、エレベーターで艦橋を降りて行った。

 

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糖尿病で入院中に描いたイラスト・007・キング・オブ・サッカーのトップ絵

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なんとか完成かな?

 『キング・オブ・サッカー』のラノベブログ用トップイラスト、何とか完成かな。
時間、かかったぁ!!

 下書きは、糖尿病で入院中にコピー用紙に描いてたもので、コピーしてスキャナーで取り込んで、下書きにしてます。
サッカーものだけあって、キャラ多い。

サッカーラノベとして

 イラストも完成まで漕ぎつけたコトだし、いよいよ本格的に連載しようかと思ってます。
連載中の他のラノベも、そろそろ終わってしまうものもあるので。

 サッカーはメジャーなスポーツだケド、それ故に評価も厳しくなりうそう。
戦術面、技術面、ちゃんと描かんとなあ。

カーくんをヨロシク!!

 主人公は、『御剣 一馬』です。
見た目はイケメンだケド、中身は頼りない感じの少年ですね。
幼馴染みの少女には、子供の頃の愛称である『カーくん』と呼ばれてます。

そんな彼と、デッドエンド・ボーイズの個性豊かな面々が織りなす、ファンタジックなサッカーをご期待下さい。

 カーくんをヨロシク!!

この世界から先生は要らなくなりました。   第03章・第05話

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四十代リストラ

 牛丼チェーン店のカウンターではない席に、七人の少女たちと座るボク。
 男性客の割合が圧倒的に多い牛丼屋では、まず見かけない光景では無かろうか?

「キアの家って、経済的に大変なのか?」
「せやな。正直、大変や。オトンが仕事クビになってもうたさかいな」

「それってユークリッドや、教育民営化法案の影響だったりするのか?」
 教育民営化法案が施行され、学校教育が民間へと移行されて十年。
公務員でなくなったコトで失職した教職員は、山のように存在した。

「ウチのオトンは、美容師の専門学校の教師やったんや。普通の学校の先生と違って、動画さえ見ておけば解かるっちゅうモンでもないんで、ちっとは安心しとったんやが……」

「あ、前にお昼の情報番組でやってました。失職した教職員が、美容師の学校や、美術やデザイン、コンピューター関連の専門学校に殺到してるって」
 卯月さんが指摘する。

「確かに教員免許を持ってれば、選択肢には挙がってくるか。若い世代なら、それぞれの分野に興味があるなら、やっていけそうだし」

「それなんや……」可児津 姫杏は、力なく言った。
 ステージでは、真っ赤に染まって暴れまくっていたツインテールも、今は焦げ茶色になって力なくうなだれている。

「専門学校も経営が厳しゅうて、できる限り若くて安上がりな人材を雇いたいみたいなんや」
「まあ専門学校も、営利企業だからな。とは言え、キアのお父さんは何歳?」

「た、たしか四十……四十一やったかな?」
「四十二です、姉さん」「せ、せやせや!」
 しっかり者の妹に指摘される、ツインテール少女。

「確かに商売人やさかい、しゃーない部分もあるで。せやけど、四十になった途端クビにされる世の中で、どないして子供育てるっちゅうねん!!」

 キアが発した台詞は、『彼女の父親が発したモノ』そのままだろうと、ボクは思った。
「四人も娘がいて、高校受験やら大学受験やらで、以前なら大変だったんだろう」

「学校自体が、無くなってしもうたんや。学力テストは盛んになったケド、高校や大学に行く必要ものォなったさかい、その辺は金がかからんで有り難いわ」

「でもユミアの開いた、ボクの教室には参加するんだろ?」
「あれは、金が出る方やさかいな。流石は天下のユークリッドや。気前ええわ」
 ボクはその事実を、初めて知った。

「ウチはこのあと先生の授業やさかい、シア……ミアとリアを頼んだで」
「このコたちより、うちにいるもっと厄介なのの方が問題だケドね」
「せやな。オトンにも、あんま酒飲まんように言うといてな」

 それからボクとキアは、卯月さんたちやキアの妹たちと別れ、ユミアのマンションに向かった。
やたらと豪勢なロビーで、ツインテール少女がとつぜん立ち止まる。

「先生、ちょっくら先行っといてんか」
「ん、どうしたんだ、キア。なにか用事か?」

「ここの決まりやねん。私物は一階のロッカーに預けとけって。まあスマホやノートパソコンなら、持ち込みOKなんやケド……」
 さすがに『巨大なカニ爪ギターは』は、マズいらしい。

 ボクは一人で、エレベーターに乗った。
扉が閉まる瞬間、一人の男の姿がエレベーター前面の透明ガラスに映る。

「やあ、久しぶりだね。授業は順調かい?」
 男は言った。

「はい。久慈樹社長。今のところ、大きな問題はありません」
 振り返ると、男は爽やかにほほ笑む。

「そうかい。だがね……『重要な問題』というのは、常に水面下で進行してしまうモノなんだ」

 反論する余地のない言葉だった。

「ボクの生徒たちに、お金が支払われているらしいですね」
「おや、もう気付いたのかい? 中々に優秀じゃないか……」

 ボクが、押し黙ったままでいると、久慈樹 瑞葉は深いため息をつく。

「それはそうだろう? うら若き少女たちの人生を、キミやユミアの茶番に付き合わせているんだからね」

 

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ある意味勇者の魔王征伐~第7章・4話

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潜航する舞人

「アレ? もう誰か入ってる」
「ホントだ。紅い髪の女の子がいますね。どこの子でしょうか?」
 リーセシルとリーフレアの双子姉妹は、互いに顔を見合わせる。

「もしかしてプリムラーナさまの、ブルー・ジュエルズ(蒼き宝石たち)のメンバーとか?」
 カーデリアは、湯船に立つ幼い少女を観察しながら、麗しき女将軍に問うた。

「いや、さすがにここまで幼いメンバーは、我が姉妹の中にもおらんな」
 プリムラーナ・シャトレーゼは、女神のように完全なる裸体に熱いお湯を流しかけながら答える。

「あっ。ルーシェリアちゃんが、教会に連れて来た女の子だ!」
 後から浴場に足を踏み入れた、栗毛の少女が言った。

「なんだ、そうだったの。でも、元魔王に人間の少女の知り合いがいたなんてね」
「もしかしてルーシェリアちゃんの、知り合いのコ?」
 パレアナは質問したが、ルーシェリアは何故か質問をはぐらかす。

「さ、さあのォ~? どこの子じゃろうな~。アハハ……」
 そう言いながら、冷たい視線を赤毛の少女に向けた。

(ヤッベ! オレの正体を知ってる、コイツも呼ばれてたんだった)
 少女は慌てて、湯船から逃亡を企てる。

「まあ、幼き少女が一人増えたところで、会議に問題はなかろう?」
「うむ。ルーシェリアの言う通りだな。少女よ、遠慮せず浸かっていくと良いぞ」
 プリムラーナは、優美な腕で少女を後ろから抱きかかえると、再び湯船に沈めた。

(うわ! 胸デ……デケエ! そして形も柔らかさも、美しさも完璧だぁ~♪)

「それではプリムラーナさま」「早速ですが、会議を始めますか?」
 最後に入って来た、アーメリアとジャーンティが、プリムラーナにお伺いを立てる。

(しまったぁ! 胸に気を取られて、つい湯船に戻っちまった。あのルーシェリアって娘は、完全にオレの正体を知ってやがるし、早く何とかしね~と!)

「そうだな。のぼせる前に、さっさと始めてしまおう」
 可憐でグラマラスな主催者は、うなずくと話を進めた。

「我ら『ブルー・ジュエルズ』が、本国・フラーニアの『フォンテーヌ・デ・ラ・デエス(女神たちの泉)』にて、日頃から開催している『浴場会議』を催してみた」
 プリムラーナが、湯舟の中央にまで進み出て、一同に挨拶をする。

「会議と銘打ってはいるが、ようは女同士の井戸端会議だ。女同士、腹を割って話そう。無論、男どもの悪口など大歓迎だ!」
 そこは丁度、因幡 舞人が身を潜め沈んでいる辺りだった。

(ウウッ……大人の女の人のお尻がぁ!? でも、なんか柔らかそうで、良い感じだ~♪)
 女将軍の直ぐソバで、水中呼吸と透明化のポーションを呑んだ舞人が潜っている。

(イカンイカン……逃げないと気付かれる! あっちの柱の向こう側なら、……)
 青い髪の少年は、逃亡ルートを切り開こうと必死だ。

「あの……今回は、重要な会議ってお話でしたケド?」
 緊張しているパレアナに対して、プリムラーナは優美な笑顔を向ける。

「まずは、お互い打ち解けようでは無いか? パレアナは、好いた男でもおらぬのか?」
「エッ!? わ、わたしは……べ、別に!?」
 栗毛の少女は、耳たぶまで真っ赤になりながら否定する。

「パレアナってば素直だねえ? ……可愛い!」
「パレアナは、舞人さん一筋ですもんね~!」

「も、もう。リーセシルさんもリーフレアさんも酷いです! 舞人は、ただの幼馴染み……って言うか」
 その噂の張本人は、幼馴染みと、薄いピンク色の髪の双子姉妹との間を移動していた。

(ムオオォ!? パレアナのヤツ知らない間に、随分と女っぽい体つきになってるよ。リーセシルさんも、リーフレアさんも、人形みたいに白くて細くてキレイだな~)

 蒼髪の少年は、ポーションやエンチャントの効力が、十分しか持たないことを完全に忘れていた。

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糖尿病で入院中に描いたイラスト・006・キング・オブ・サッカーのトップ絵

 

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とりあえず背景

 とりあえず、背景付けてみた。

 キャラが多いので、慎重に色を調整しないと上手くまとまらない。
実は『キング・オブ・サッカー』の内容も、主人公の御剣 一馬がデッドエンド・ボーイズの個性的なメンバーに、手を焼かされるお話です。

 倉崎 世叛が目指すチームは、ポゼッション・サッカーでボールをガンガン回していくスタイル。
戦術的には74年のオランダのように、多くのトライアングルを創るパスサッカーのカタチは踏襲しながらも、現代サッカーに合わせた戦術を取り入れる予定。

オフ・ザ・ボールの動き

 今回の話は、トップリーグではなく地域リーグに所属するところから始まるので、多少は古びた戦術でもなんとかなってしまう部分はあると思うが……。

 戦術面を描くのは、かなり骨が折れる作業になりそうだ。
『点を取る』という、サッカーにおいてもっとも解かりやすい部分では無く、ボールを持ってないときの動き……とくにスペースを作り出す動きを得意とするのが、主人公の一馬だ。

 1958年・62年ワールドカップの、エル・ロボ(狼)ことマリオ・ザガロや、70年大会のトスタン、94年のベベットなどは、スペースを生み出す動きに優れていた。

 トスタンを例にすると、彼はワールドカップ本大会に出るための南米予選で、ブラジルの挙げた得点の半分を決めていた。
それが本大会でのトスタンは、スペースを生み出す動きに徹っする。

 彼が開けたスペースにペレがボールを供給し、走り込んできたジャイルジーニョやリベリーノがゴールを決めるスタイルでブラジルは優勝し、ジュール・リメ杯を永遠wにブラジルのモノとした。

 近代サッカーにおいても、スペースを生み出す動きは重要視され、フランスのベンゼマや、ブラジルのフェルミーノなどは、高く評価されてますね。

ブラジルの新星

 レアル・マドリードのロドリゴが素晴らしい。
長らく、クリロナ(クリスティアーノ・ロナウド)の抜けた穴を、埋められないでいたレアル。

 そんなレアルに、衝撃的な18歳がデビューした。
ブラジルの新星、ロドリゴはサイドアタッカーながらもハットトリックを決めてしまう。

 とにかくこのロドリゴ、点もさることながら、判断がメチャクチャ早い。
ドリブルで仕掛けるのか、パスを選択するのか、無理せず戻すのか、やたらと思い切りがいい。

 ジェズスのときも驚いたが、まるでプロサッカー選手として何年もキャリアを重ねてきた選手のように、サッカーをよく知っている。

 昨今のブラジルは、とてつもない個人技を持った選手よりも、ロドリゴのようなスタイリッシュな選手が多く出て来てるように思う。

糖尿病で入院中に描いたイラスト・005・キング・オブ・サッカーのトップ絵

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デッドエンド・ボーイズ

 なんとか、基本カラー割りまで完成。
毎回キャラ多くて、面倒くさいったらない。


 倉崎 世叛が立ち上げたチームの名前は、『デッドエンド・ボーイズ』。
みんな、なにかに行き詰ってる。

 名前の由来の、『~ボーイズ』は、ニューウェルズ・オールドボーイズからインスパイアしてますね。

 かの有名な『リオネル・メッシ』や、『ガブリエル・バティストゥータ』、『アベル・バルボ』らが在籍した、ジュニア世代の育成に定評のあるクラブです。

 アルゼンチンと言えば、マラドーナを世に送り出した、ボカ・ジュニアーズや、名門中の名門であるリーヴェル・プレートらがありますが、ボクの時代ではニューウェルズも、そこそこ強かったかな?

南米最強の時代

 今でこそ、サッカーと言えばヨーロッパ・リーグですが、ボクの若い頃は南米のチームにヨーロッパのチームは、まったく勝てませんでした

 トヨタカップでも、イアン・ラッシュや、ケニー・ダルグリッシュを擁する、当時黄金期を向かえていたリバプールですら、勝つことはできなかったんです。

 そんな南米のチームを最初に破ったのが、ミシェル・プラティニ率いるユベントスでした。

 今でも語り草になってる、プラティニの幻のシュートとかありましたね。
当時、プラティニをはじめサッカー選手の絵を、たくさん描きました。
でも日本の選手で描いたのは、セルジオ・越後くらいだった気が……。

 当時、日本のサッカーは低迷期で、マジで弱かった。
ソ連の二部チーム(クラブチーム)に負けて、ヘラヘラ握手とかしてた時代でした。


セルジオ越後

 ちなみに、主人公の御剣 一馬のモデルは、セルジオ越後です。
え!? ……とか思ってる、そこのあなた。
昔はセルじいも、カッコよかったんですからね!

萌え茶道部の文貴くん。第六章・第十六話

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経営権

 『醍醐寺 草庵』と『醍醐寺 五月』夫妻の、穏やかな顔に観客は盛大な拍手を送った。

 事情を知らない観客達にとっては、この夫婦が長年対立を続け、現在においては別居生活をしている『仮面夫婦』だとは、夢にも思わないだろう。

「アレが残して行った娘たちも、子供だとばかり思っていたが……いつの間にか、こんな茶を点てられるようになっていたとは……」
 醍醐寺 草庵は、浅間 楓卯歌と穂埜歌の二人に、亡くなってしまった過去の妹の顔を重ねる。

「お前はどう思うのだ。今のわたしのしているコトは……」
 草庵の妹は、過去に男と駆け落ちをし醍醐寺を出て行った。
二人の間に双子が生まれ、彼女たちが小学生になったときに悲劇は起きる。

「伯父さま、母は言ってました。わたしの兄さんは、素晴らし人だって」
「でも、そんな兄さんを裏切ってしまって、申し訳ないと……」

「アレが……そんなコトを?」
 最愛の妹を失ってから、草庵は心をかたくなに閉ざしていた。
「くだらない男に騙されたばかりに、悲劇に遭ったのだと思っていたが……」

「お父さんも、醍醐寺の名前を汚してしまったコトを、後悔してたよ」
「でもその分、ちゃんと幸せにならなきゃって……」

「何が幸せだ!? アレまで死なせてしまって……」
「交通事故は、お父さんに非が無いって証明されてるよ」
「対向車のトラックの、居眠り運転が原因だって!」

「春流歌は……もっと幸せに、生きるべきだったのだ」
 草庵も事故の原因が、二人の父親に無いコトは理解していた。
けれども、いくら頭で理解していても、心が許せなかった。

「草庵様ともあろうお方が、いけませんねェ!!」
 草庵の背後から、気味が悪いほど高く気にさわる声がする。

「『情』などと言う下らない感情に流されていては、企業の……ましてや日本を代表する巨大企業・醍醐寺のトップに君臨する資格はございませんわ」
 千乃 玉忌は目を細く吊り上げ、草庵を見降した。

「何だとッ!? 貴様、たかが経営コンサルタントの分際で、出しゃばりおってッ!」

「あら? ……まだお気づきになられませんの、草庵様?」
 草庵が振り返ると、女は口を大きく歪めて笑っている。

「な、何の……事だ!?」
 草庵には、女の言っている意味は理解できなかったが、本能的に得体の知らなさに怯えてもいた。

「草庵様の会社、醍醐寺の株式……既に四十パーセント以上が、我が経営コンサルタントの『親会社』のものですのよ?」
 草庵の瞳には、キツネの様な顔の女が映る。

「バ、バカな……そんな筈はッ!?」
 大勢の観客の見ている目の前で、立ち上がった。

「貴方様の手で介護施設に押し込めた、先代の社長である醍醐寺 劉庵から、会社を譲渡されるに当たって、税金対策のために重役の方達にも、随分と株式を分配なさったのはご存知ですよねえ?」

「それが……どうし……た……?」
 醍醐寺 草庵は、女が発した言葉を理解し蒼ざめる。

「……草庵様は、わたくしの進言するままに、『先代社長の時代からの重役』を切り捨てて来られました。その方々は現在、我がコンサルタント会社の親会社におりますのよ?」

 草庵は『してやられた事』に、やっとこの場所、この時点で気付いた。

「親会社などとッ! ……どうせ『実体の無いペーパーカンパニー』だろうに!」
「あら、その辺は抜かりございませんわ。ちゃんとした実体のある企業ですのよ? 少なくとも、貴方様の支配する今の醍醐寺の様な、ブラック企業ではございませんわ」

 女は、男の首に腕を絡ませ、背筋の凍りつく様な声で妖しく言い放つ。
「自分の愚かさ、無能さに気付かず、会社を乗っ取られたバカな二代目……貴方様に最も相応しい『称号』だとは、思われませんかぁ?」

「ウ……ウソだ!? そんなに簡単に、経営権を奪えるハズが……!?」
 男は椅子に座ったまま、全てを失ったことを理解する。

 その時、体育館の扉が開いた。

 扉の向こう、逆光を背に入ってきたのは、渡辺だった。

「……みんな、待たせてゴメン!」
 眼鏡の少年は、覚悟を決めた表情をしていた。

 

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