ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

ある意味勇者の魔王征伐~第7章・4話

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潜航する舞人

「アレ? もう誰か入ってる」
「ホントだ。紅い髪の女の子がいますね。どこの子でしょうか?」
 リーセシルとリーフレアの双子姉妹は、互いに顔を見合わせる。

「もしかしてプリムラーナさまの、ブルー・ジュエルズ(蒼き宝石たち)のメンバーとか?」
 カーデリアは、湯船に立つ幼い少女を観察しながら、麗しき女将軍に問うた。

「いや、さすがにここまで幼いメンバーは、我が姉妹の中にもおらんな」
 プリムラーナ・シャトレーゼは、女神のように完全なる裸体に熱いお湯を流しかけながら答える。

「あっ。ルーシェリアちゃんが、教会に連れて来た女の子だ!」
 後から浴場に足を踏み入れた、栗毛の少女が言った。

「なんだ、そうだったの。でも、元魔王に人間の少女の知り合いがいたなんてね」
「もしかしてルーシェリアちゃんの、知り合いのコ?」
 パレアナは質問したが、ルーシェリアは何故か質問をはぐらかす。

「さ、さあのォ~? どこの子じゃろうな~。アハハ……」
 そう言いながら、冷たい視線を赤毛の少女に向けた。

(ヤッベ! オレの正体を知ってる、コイツも呼ばれてたんだった)
 少女は慌てて、湯船から逃亡を企てる。

「まあ、幼き少女が一人増えたところで、会議に問題はなかろう?」
「うむ。ルーシェリアの言う通りだな。少女よ、遠慮せず浸かっていくと良いぞ」
 プリムラーナは、優美な腕で少女を後ろから抱きかかえると、再び湯船に沈めた。

(うわ! 胸デ……デケエ! そして形も柔らかさも、美しさも完璧だぁ~♪)

「それではプリムラーナさま」「早速ですが、会議を始めますか?」
 最後に入って来た、アーメリアとジャーンティが、プリムラーナにお伺いを立てる。

(しまったぁ! 胸に気を取られて、つい湯船に戻っちまった。あのルーシェリアって娘は、完全にオレの正体を知ってやがるし、早く何とかしね~と!)

「そうだな。のぼせる前に、さっさと始めてしまおう」
 可憐でグラマラスな主催者は、うなずくと話を進めた。

「我ら『ブルー・ジュエルズ』が、本国・フラーニアの『フォンテーヌ・デ・ラ・デエス(女神たちの泉)』にて、日頃から開催している『浴場会議』を催してみた」
 プリムラーナが、湯舟の中央にまで進み出て、一同に挨拶をする。

「会議と銘打ってはいるが、ようは女同士の井戸端会議だ。女同士、腹を割って話そう。無論、男どもの悪口など大歓迎だ!」
 そこは丁度、因幡 舞人が身を潜め沈んでいる辺りだった。

(ウウッ……大人の女の人のお尻がぁ!? でも、なんか柔らかそうで、良い感じだ~♪)
 女将軍の直ぐソバで、水中呼吸と透明化のポーションを呑んだ舞人が潜っている。

(イカンイカン……逃げないと気付かれる! あっちの柱の向こう側なら、……)
 青い髪の少年は、逃亡ルートを切り開こうと必死だ。

「あの……今回は、重要な会議ってお話でしたケド?」
 緊張しているパレアナに対して、プリムラーナは優美な笑顔を向ける。

「まずは、お互い打ち解けようでは無いか? パレアナは、好いた男でもおらぬのか?」
「エッ!? わ、わたしは……べ、別に!?」
 栗毛の少女は、耳たぶまで真っ赤になりながら否定する。

「パレアナってば素直だねえ? ……可愛い!」
「パレアナは、舞人さん一筋ですもんね~!」

「も、もう。リーセシルさんもリーフレアさんも酷いです! 舞人は、ただの幼馴染み……って言うか」
 その噂の張本人は、幼馴染みと、薄いピンク色の髪の双子姉妹との間を移動していた。

(ムオオォ!? パレアナのヤツ知らない間に、随分と女っぽい体つきになってるよ。リーセシルさんも、リーフレアさんも、人形みたいに白くて細くてキレイだな~)

 蒼髪の少年は、ポーションやエンチャントの効力が、十分しか持たないことを完全に忘れていた。

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糖尿病で入院中に描いたイラスト・006・キング・オブ・サッカーのトップ絵

 

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とりあえず背景

 とりあえず、背景付けてみた。

 キャラが多いので、慎重に色を調整しないと上手くまとまらない。
実は『キング・オブ・サッカー』の内容も、主人公の御剣 一馬がデッドエンド・ボーイズの個性的なメンバーに、手を焼かされるお話です。

 倉崎 世叛が目指すチームは、ポゼッション・サッカーでボールをガンガン回していくスタイル。
戦術的には74年のオランダのように、多くのトライアングルを創るパスサッカーのカタチは踏襲しながらも、現代サッカーに合わせた戦術を取り入れる予定。

オフ・ザ・ボールの動き

 今回の話は、トップリーグではなく地域リーグに所属するところから始まるので、多少は古びた戦術でもなんとかなってしまう部分はあると思うが……。

 戦術面を描くのは、かなり骨が折れる作業になりそうだ。
『点を取る』という、サッカーにおいてもっとも解かりやすい部分では無く、ボールを持ってないときの動き……とくにスペースを作り出す動きを得意とするのが、主人公の一馬だ。

 1958年・62年ワールドカップの、エル・ロボ(狼)ことマリオ・ザガロや、70年大会のトスタン、94年のベベットなどは、スペースを生み出す動きに優れていた。

 トスタンを例にすると、彼はワールドカップ本大会に出るための南米予選で、ブラジルの挙げた得点の半分を決めていた。
それが本大会でのトスタンは、スペースを生み出す動きに徹っする。

 彼が開けたスペースにペレがボールを供給し、走り込んできたジャイルジーニョやリベリーノがゴールを決めるスタイルでブラジルは優勝し、ジュール・リメ杯を永遠wにブラジルのモノとした。

 近代サッカーにおいても、スペースを生み出す動きは重要視され、フランスのベンゼマや、ブラジルのフェルミーノなどは、高く評価されてますね。

ブラジルの新星

 レアル・マドリードのロドリゴが素晴らしい。
長らく、クリロナ(クリスティアーノ・ロナウド)の抜けた穴を、埋められないでいたレアル。

 そんなレアルに、衝撃的な18歳がデビューした。
ブラジルの新星、ロドリゴはサイドアタッカーながらもハットトリックを決めてしまう。

 とにかくこのロドリゴ、点もさることながら、判断がメチャクチャ早い。
ドリブルで仕掛けるのか、パスを選択するのか、無理せず戻すのか、やたらと思い切りがいい。

 ジェズスのときも驚いたが、まるでプロサッカー選手として何年もキャリアを重ねてきた選手のように、サッカーをよく知っている。

 昨今のブラジルは、とてつもない個人技を持った選手よりも、ロドリゴのようなスタイリッシュな選手が多く出て来てるように思う。

糖尿病で入院中に描いたイラスト・005・キング・オブ・サッカーのトップ絵

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デッドエンド・ボーイズ

 なんとか、基本カラー割りまで完成。
毎回キャラ多くて、面倒くさいったらない。


 倉崎 世叛が立ち上げたチームの名前は、『デッドエンド・ボーイズ』。
みんな、なにかに行き詰ってる。

 名前の由来の、『~ボーイズ』は、ニューウェルズ・オールドボーイズからインスパイアしてますね。

 かの有名な『リオネル・メッシ』や、『ガブリエル・バティストゥータ』、『アベル・バルボ』らが在籍した、ジュニア世代の育成に定評のあるクラブです。

 アルゼンチンと言えば、マラドーナを世に送り出した、ボカ・ジュニアーズや、名門中の名門であるリーヴェル・プレートらがありますが、ボクの時代ではニューウェルズも、そこそこ強かったかな?

南米最強の時代

 今でこそ、サッカーと言えばヨーロッパ・リーグですが、ボクの若い頃は南米のチームにヨーロッパのチームは、まったく勝てませんでした

 トヨタカップでも、イアン・ラッシュや、ケニー・ダルグリッシュを擁する、当時黄金期を向かえていたリバプールですら、勝つことはできなかったんです。

 そんな南米のチームを最初に破ったのが、ミシェル・プラティニ率いるユベントスでした。

 今でも語り草になってる、プラティニの幻のシュートとかありましたね。
当時、プラティニをはじめサッカー選手の絵を、たくさん描きました。
でも日本の選手で描いたのは、セルジオ・越後くらいだった気が……。

 当時、日本のサッカーは低迷期で、マジで弱かった。
ソ連の二部チーム(クラブチーム)に負けて、ヘラヘラ握手とかしてた時代でした。


セルジオ越後

 ちなみに、主人公の御剣 一馬のモデルは、セルジオ越後です。
え!? ……とか思ってる、そこのあなた。
昔はセルじいも、カッコよかったんですからね!

萌え茶道部の文貴くん。第六章・第十六話

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経営権

 『醍醐寺 草庵』と『醍醐寺 五月』夫妻の、穏やかな顔に観客は盛大な拍手を送った。

 事情を知らない観客達にとっては、この夫婦が長年対立を続け、現在においては別居生活をしている『仮面夫婦』だとは、夢にも思わないだろう。

「アレが残して行った娘たちも、子供だとばかり思っていたが……いつの間にか、こんな茶を点てられるようになっていたとは……」
 醍醐寺 草庵は、浅間 楓卯歌と穂埜歌の二人に、亡くなってしまった過去の妹の顔を重ねる。

「お前はどう思うのだ。今のわたしのしているコトは……」
 草庵の妹は、過去に男と駆け落ちをし醍醐寺を出て行った。
二人の間に双子が生まれ、彼女たちが小学生になったときに悲劇は起きる。

「伯父さま、母は言ってました。わたしの兄さんは、素晴らし人だって」
「でも、そんな兄さんを裏切ってしまって、申し訳ないと……」

「アレが……そんなコトを?」
 最愛の妹を失ってから、草庵は心をかたくなに閉ざしていた。
「くだらない男に騙されたばかりに、悲劇に遭ったのだと思っていたが……」

「お父さんも、醍醐寺の名前を汚してしまったコトを、後悔してたよ」
「でもその分、ちゃんと幸せにならなきゃって……」

「何が幸せだ!? アレまで死なせてしまって……」
「交通事故は、お父さんに非が無いって証明されてるよ」
「対向車のトラックの、居眠り運転が原因だって!」

「春流歌は……もっと幸せに、生きるべきだったのだ」
 草庵も事故の原因が、二人の父親に無いコトは理解していた。
けれども、いくら頭で理解していても、心が許せなかった。

「草庵様ともあろうお方が、いけませんねェ!!」
 草庵の背後から、気味が悪いほど高く気にさわる声がする。

「『情』などと言う下らない感情に流されていては、企業の……ましてや日本を代表する巨大企業・醍醐寺のトップに君臨する資格はございませんわ」
 千乃 玉忌は目を細く吊り上げ、草庵を見降した。

「何だとッ!? 貴様、たかが経営コンサルタントの分際で、出しゃばりおってッ!」

「あら? ……まだお気づきになられませんの、草庵様?」
 草庵が振り返ると、女は口を大きく歪めて笑っている。

「な、何の……事だ!?」
 草庵には、女の言っている意味は理解できなかったが、本能的に得体の知らなさに怯えてもいた。

「草庵様の会社、醍醐寺の株式……既に四十パーセント以上が、我が経営コンサルタントの『親会社』のものですのよ?」
 草庵の瞳には、キツネの様な顔の女が映る。

「バ、バカな……そんな筈はッ!?」
 大勢の観客の見ている目の前で、立ち上がった。

「貴方様の手で介護施設に押し込めた、先代の社長である醍醐寺 劉庵から、会社を譲渡されるに当たって、税金対策のために重役の方達にも、随分と株式を分配なさったのはご存知ですよねえ?」

「それが……どうし……た……?」
 醍醐寺 草庵は、女が発した言葉を理解し蒼ざめる。

「……草庵様は、わたくしの進言するままに、『先代社長の時代からの重役』を切り捨てて来られました。その方々は現在、我がコンサルタント会社の親会社におりますのよ?」

 草庵は『してやられた事』に、やっとこの場所、この時点で気付いた。

「親会社などとッ! ……どうせ『実体の無いペーパーカンパニー』だろうに!」
「あら、その辺は抜かりございませんわ。ちゃんとした実体のある企業ですのよ? 少なくとも、貴方様の支配する今の醍醐寺の様な、ブラック企業ではございませんわ」

 女は、男の首に腕を絡ませ、背筋の凍りつく様な声で妖しく言い放つ。
「自分の愚かさ、無能さに気付かず、会社を乗っ取られたバカな二代目……貴方様に最も相応しい『称号』だとは、思われませんかぁ?」

「ウ……ウソだ!? そんなに簡単に、経営権を奪えるハズが……!?」
 男は椅子に座ったまま、全てを失ったことを理解する。

 その時、体育館の扉が開いた。

 扉の向こう、逆光を背に入ってきたのは、渡辺だった。

「……みんな、待たせてゴメン!」
 眼鏡の少年は、覚悟を決めた表情をしていた。

 

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一千年間引き篭もり男

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目次

第一章・時澤 黒乃

第一話 第二話 第三話
第四話 第五話 第六話
第七話        

第二章・一千年間引き籠りました

第一話 第二話 第三話
第四話 第五話 第六話
第七話 第八話 第九話
第十話 第十一話 第十二話
第十三話 第十四話 第十五話
第十六話 第十七話    

第三章・MVSクロノ・カイロス

第一話 第二話 第三話
第四話 第五話 第六話
第七話 第八話 第九話
第十話 第十一話 第十二話
第十三話 第十四話 第十五話
第十六話 第十七話 第十八話
第十九話 第二十話    

第四章・漆黒の海の魔女

第一話 第二話 第三話
第四話 第五話 第六話
第七話 第八話 第九話
第十話 第十一話 第十二話
第十三話        

第五章・トロイアクライシス

第一話 第二話 第三話
第四話 第五話 第六話
第七話 第八話 第九話
第十話 第十一話 第十二話
第十三話 第十四話 第十五話
第十六話 第十七話 第十八話
第十九話 第二十話 第二十一話
第二十二話 第二十三話 第二十四話
第二十五話 第二十六話 第二十七話
第二十八話 第二十九話 第三十話
第三十一話 第三十ニ話 第三十三話
第三十四話 第三十五話 第三十六話
第三十七話 第三十八話 第三十九話
第四十話 第四十一話 第四十ニ話
第四十三話 第四十四話 第四十五話
第四十六話 第四十七話 第四十八話
第四十九話 第五十話 第五十一話
第五十二話 第五十三話 第五十四話
第五十五話 第五十六話 第五十七話

第六章・ディー・コンセンテス

第一話 第二話 第三話
第四話 第五話 第六話
第七話 第八話 第九話
第十話 第十一話 第十二話
第十三話 第十四話 第十五話
第十六話 第十七話 第十八話
第十九話 第ニ十話 第ニ十一話
第ニ十二話 第二十三話 第ニ十四話
第ニ十五話 第ニ十六話 第ニ十七話
第二十八話 第二十九話 第三十話
第三十一話 第三十ニ話 第三十三話
第三十四話 第三十五話 第三十六話
第三十七話 第三十八話 第三十九話
第四十話 第四十一話 第四十二話
第四十三話 第四十四話 第四十五話
第四十六話 第四十七話 第四十八話
第四十九話 第五十話 第五十一話
第五十二話 第五十三話 第五十四話
第五十五話 第五十六話 第五十七話
第五十八話 第五十九話 第六十話
第六十一話 第六十二話 第六十三話
第六十四話 第六十五話 第六十六話
第六十七話 第六十八話 第六十九話

第七章・地球へ

第一話 第二話 第三話
第四話 第五話 第六話
第七話 第八話 第九話
第十話 第十一話 第十二話
第十三話 第十四話 第十五話
第十六話 第十七話 第十八話
第十九話 第二十話 第二十一話
第二十二話 第二十三話 第二十四話
第二十五話 第二十六話 第二十七話
第二十八話 第二十九話 第三十話
第三十一話 第三十二話 第三十三話
第三十四話 第三十五話 第三十六話
第三十七話 第三十八話 第三十九話
第四十話 第四十一話 第四十二話
第四十三話 第四十四話 第四十五話
第四十六話 第四十七話 第四十八話
第四十九話 第五十話 第五十一話
第五十二話 第五十三話 第五十四話
第五十五話 第五十六話 第五十七話
第五十八話        

第八章・アステカの太陽

第一話 第二話 第三話
第四話 第五話 第六話
第七話 第八話 第九話
第十話 第十一話 第十二話
第十三話 第十四話 第十五話
第十六話 第十七話 第十八話
第十九話 第二十話 第二十一話
第二十二話 第二十三話 第二十四話
第二十五話 第二十六話 第二十七話
第二十八話 第二十九話 第三十話
第三十一話 第三十二話 第三十三話
第三十四話 第三十五話 第三十六話
第三十七話 第三十八話 第三十九話
第四十話 第四十一話 第四十二話
第四十三話 第四十四話 第四十五話
第四十六話 第四十七話 第四十八話
第四十九話 第五十話 第五十一話
第五十二話 第五十三話 第五十四話
第五十五話 第五十六話 第五十七話
第五十八話 第五十九話 第六十話
第六十一話 第六十二話 第六十三話
第六十四話 第六十五話 第六十六話
第六十七話 第六十八話 第六十九話
第七十話 第七十一話 第七十二話
第七十三話 第七十四話 第七十五話

   

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一千年間引き篭もり男・第04章・04話

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漆黒の宇宙船

「ギリシャとトロイア……本来なら敵国同士の艦体が、共に轡(くつわ)を並べて仲良く航行ってか。洒落にならねえ光景だぜ」

「そんなにおかしいコトなのか、プリズナー? 呉越同舟って言葉もあるが」
「おかしいなんてモンじゃねえぜ。グリーク・インフレイムとトロイア・クラッシックって言やあ、会長同志が犬猿の仲でお互い一歩も譲歩しねえコトで有名だからな」

『二十一世紀で例えるなら、アメリカとロシア、あるいは中国が合同軍事演習をしているようなモノでしょうか?』
「そりゃ、無さそうだな。ところでベル、二つの艦隊の向かっている先は解るか?」

『一直線にこちらに向かってきております、艦長。いかがいたしましょうか?』
「な、なんだってェ!!?」
『両艦体とも、最短距離で近づいてきていますね」

「一体、なにが目的なんだ!? わかるか、ベル、プリズナー?」
『残念ながら、まだかなりの距離があり、電子戦を仕掛けられる状況ではございません』
「オレだって、艦隊戦なんざ専門外だ」

「やっぱ、この艦を敵と認識してるんじゃないのか、じいさん」
「でもでもォですよ、マケマケ。もしかしたら、話し合いって可能性も……」
「なに言ってるの、セノン」「相手はコンピューターだよ。その可能性は低いと思う」

「おじいちゃんは、どうおもいますかぁ?」
「そうだな、セノン。ボクも真央やヴァルナの意見が、正しいように思う」

「じゃあ決まりだな。暴走した無人艦隊なんざ相手にしてたら、命がいくつあっても足りねえぜ」
「そうだな、まずはみんなの安全が最優先だ。この宙域を離脱しよう」

『了解いたしました。MVSクロノ・カイロスの航行速度は、相手の二倍に相当します。行き先は、どちらにいたしますか?』

「やはり、火星に戻るのが最優先だ。セノンもクーリアも、真央たちも、ハルモニア女学院には友達もいるだろうし、親も家族もいるだろう。できるだけ早く返してあげたい」
『わかりました。では、その様に……』

「きゃああああ!!?」「うわあ、な……なんだッ!!?」
 その時、船体が大きく揺れた。

「おい、ベルダンディ……一体、なにが起こってやがる!?」
 フォログラムに怒りをぶつけるプリズナーに、彼の相棒の女性型『コンバット・バトルテクター』が答える。

「見て、プリズナー。空間が歪んで、真黒な艦がッ!!?」
 艦橋の右前方の宇宙空間が、グニャリと渦を巻いた。

「オ、オイオイ。どうなってやがる!? ギリシャやトロイアの連中は、ワープ技術をも確立してやがったのか?」
 そこから出現したのは、先端が四つに分かれた漆黒の巨大な艦だった。

『恐らく二つの勢力とは、無関係の艦と思われます。設計思想から技術的な部分まで、既存(きぞん)の両国の艦艇とはあまりにかけ離れています』

「ど、どう言うコト、おじいちゃん!?」「あの艦は一体、なんなんだ?」
「何もない宇宙空間から、いきなりあんな巨大な艦が飛び出てくるなんて……」
「しかも、こっちの進路を塞ぐように止まってるよ!?」

 セノンも、真央も、ヴァルナも、ハウメアも完全に冷静さを完全に失っていた。

「答えは簡単だろうな」「え? どう言うコト……?」
 ボクは目の前で繰り広げられる、SFアニメかスペースオペラのような光景に唖然としながらも、何故か頭の中はスッキリと落ち着いている。

「グリーク・インフレイムと、トロイア・クラッシック……二つの巨大企業の艦隊を、ジャックしたのがあの艦だろう。それに……」
 ヤレヤレといった気分になって、艦長の偉そうな椅子にドカッと腰を下ろした。

「そうか……なるホドな」
 ボクの顔を横目に見ながら、プリズナーは意図を理解する。
「二つの艦隊を乗っ取り、クーリアやそこのクソガキ共を拉致するように指示した親玉ってのが……」

「ああ、『時の魔女』……まったく、何者なんだか」

 ボクは、突如として現れた宇宙船の漆黒の艦体に、火星の衛星の地下に埋まってしまった、『時澤 黒乃』の面影を重ねていた。

 

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この世界から先生は要らなくなりました。   第03章・第04話

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ライブの後の牛丼

 暗闇にホコリが浮かぶスポットライトが、ステージの少女を照らし出した。

 朱色の革ジャンに白いシャツ、赤いチェックのスカート姿に着替えていた少女は、カニ爪ギターを『ギャオン』と鳴らす。

「今回は、新曲ひっ下げてきたでェ。茹で立ての熱々や!」
 可児津 姫杏は、自分がカニ属性のキャラなのをフル活用していた。

「『カニの杏かけスパゲティー』。アンかけの杏は、姫杏のあんずやで!」
 真っ赤なツインテールの少女は、振り返ってバンドのメンバーを見る。

「ワン・ツー・スリー・フォー!!」
 いきなりドラムが、激しく鳴り響く。
キアのギターも後を追いかけ、リズムギターとベースも演奏を開始する。

「全員女の子のガールズ・バンドか。みんな、キアと同じ赤い髪なんだな」
「実は全員、キャンさんの妹さんなんですよ」

「ドラムのコが、中学二年の詩杏ちゃんで、リズムギターとベースのコが、双子の実杏ちゃんと理杏ちゃんです」
「二人はまだ小学六年なんですよ」

 ライブ演奏のさなかでも、バンド愛を語り聞かせてくれる、卯月さん、花月さん、由利さん。

「でもバラードかあ……なんか意外だな。歌も、ハイトーンのオペラ歌手みたいだし」
 キアの大阪弁から受けるイメージとは、かけ離れたゴシックな曲調だった。

 すると、ワンパートを終えた時点で、曲がゆっくりと中断される。
「アレ……もう終わりか?」
 そう思った瞬間だった。

「チョッキン・ナーーーーーーーッ!!」
 それまでとは正反対の、ドスの効いた声で叫ぶキア。
 高らかに挙げられた右手は、ピースサインではなくカニのハサミのごとくチョキチョキしていた。

「ワアアアアァァーーーーーーッ!!」
 会場の空気が、とつぜん熱を帯びる。

 シアが打ち鳴らすドラムも、壊れないかと思うホドに激しさを増し、双子が作り出すリズムもアップテンポに変化した。

「セイヴィングッ!! セイヴィングッ!! セイヴィングッ!!」
 となりの三人の女子高生も、右手を突き上げハサミを作って声援を送る。

「なるホド。歌詞は、猿カニ合戦のカニ視点なのか。セイヴィングって、貯金って意味だから、貯金とチョッキンをかけて……」
 リアリストなカニが、財を蓄えて猿に復讐する話にアレンジされていた。

「もう、なに無粋なコト言ってるんですか!?」
「先生も、手を挙げて……ホラ!」
「チョッキン、チョキチョキ、チョキン・ナーーーーッ!!」

「ちょっきん、ちょきちょき……」
 若干キャラが変わっている三人に命令されて、ボクも拳をチョキチョキする。

 みずぼらしいビルの地下にある、小さなライブ会場は最高潮に盛り上がって終わった。

「ふえ~、それにしてもスゴイ盛り上がりだったな」
 今朝まで熱を出していたボクは、牛丼屋のテーブルの上におでこをつけて頭を冷やす。

「キャンさんたちのバンドは、インディーズの中でも観客動員がスゴイんですよ!」
「ネットでの楽曲販売も、いつも上位にランクインしてますしね」
「今日の新曲も、絶対に人気出ますよ、キャンさん!」

 まるで自分のコトのように、チョッキン・ナーを自慢する卯月さん花月さん、由利さん。

「せやろか? ウチも、こっちに来てから金巡りが悪うてな。どうにか売れてもらわんと、困ってまうんやわ」
 キアの真っ赤な髪は、すでに元の焦げ茶色に戻っていた。

「でも姉さんの先生。わたしたちまでご馳走になってしまって、よかったんですか?」
 さっきまでドラムを叩いていた、シアが申し訳なさそうな顔をしている。
彼女は姉のキアよりも若干小柄で、大人しそうな少女だった。

「なんや、シア。ウチでは大阪弁のクセに、標準語なんか喋りくさってててて!」
「うるさいですよ、お姉ちゃん」
 妹に、頬っぺたを引っ張られているキア。

「アハハ、いいんだよ。むしろ、社会人なのに牛丼くらいしかおごれなくて、ゴメンな」
 まるで自分から率先しておごったみたいだが、パンツを見てしまったお詫びに、キアや卯月さんたちに強制的におごらされているのだ。

「でも、牛丼おいしいよね」「これからライブのあとは、牛丼にしよ!」
 言葉通り、おいしそうに牛丼を頬張る、双子の小学生たち。

「そりゃアカンわ。ウチの家計は今、火の車やさかいな」
 ツインテールの少女は、顔を曇らせながら言った。

 

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